東京電力福島第1原発事故の被災者を支援する「子ども・被災者支援法」が成立して1年以上過ぎても、国が支援策の基本方針を定めないのは違法だとして、被災者19人が22日、東京地裁に提訴しました。
原告は、国が定めた避難指示区域以外の福島市や郡山市に住んでいた人のほか、線量が高い宮城県丸森町、栃木県那須塩原市などの住民19人。うち、避難者は12人、避難せずに暮らすのは7人です。
支援法は昨年(2012年)6月に超党派の議員立法で成立。一定の放射線量の基準を上回る地域を支援対象地域と規定し、住民や子どもの健康調査や医寮支援などを国に義務付けています。しかし、対象地域を定める基本方針が策定されず、法に基づく支援策が具体化していません。
訴状で原告側は、一般人の年間累積線量限度の1ミリシーベルトを基準にすべきだとし、これを超える地域に住む原告が支援法の対象となることの確認も求めています。
会見で、弁護団の福田健治弁護士は、支援法に基本方針を政府が定めるものと明記されているにもかかわらず、いまだに策定されていないことを批判。避難する人にも残る人にも、差のない支援を求めました。
また、復興庁の当時の参事官がツイッタ一に、基本方針の先送りを示唆したとみられる書き込みをしたことに対し、「被災者の意見を聞いてくれていると思っていたが、聞いていなかったことが明らかになった」と批判しました。
原発事故の直後に2人目の子どもが生まれ、福島市から家族とともに岡山市へ避難している丹治泰弘さんは、「国が未来の子どもたちに真剣に向き合う覚悟があるのか問われている」とのべ、一日でも早く子どもたちが安心して暮らせる社会にしてほしいと訴えました。
郡山市に住む野口時子さんは、事故当時小学6年生だった娘の健康への心配を語り、「何の罪もない子どもたちの将来に差があってはならない」と涙ぐみました。
いわき市から岐阜県へ避難している小林賢泰さんは、「国は被災者を救済もせず、原発を再稼働して輸出しようとしている。私たちをこれ以上失望させないでほしい」と涙で声を詰まらせながら語り、被災者の声を法に反映させることを求めました。