東京電力福島第1原発で貯蔵タンクから高濃度の放射性物質を含む汚染水漏れについて、8月21日開かれた原子力規制委員会の汚染水対策検討会議で、漏れたタンク底部のコンクリート基礎部が破損し地下に浸透している可能性が指摘されました。
検討会で東電は、タンクからの漏えいは長期間続いていて、漏れた汚染水はタンクの堰(せき)を越えて大半が土にしみ込んでいるとしました。
これに対し規制委側から疑問が相次ぎました。安原正也・産業技術総合研究所主任研究員は、「タンク底部のコンクリート基礎部を抜けて真下に浸透したと考えるのが妥当だ」と指摘しました。
東電は、地下水流入防止対策の一つとして、原子炉建屋地下に流入する前の地下水を上流側で掘った井戸でくみ上げる計画(地下水バイパス)を進めようとしています。安原氏は、今回の漏えいが見つかったタンクの場所が、くみ上げる井戸から上流に位置しているため、「計画は破たんしかねない。掘削調査など早急に状況を確認すべきだ」と発言しました。
排水弁開けっ放し・・点検は目視 東電ずさん管理
東電のずさんな管理も浮き彫りになりました。
汚染水タンクの周囲には漏えいを防止するための堰が設置されていますが、排水弁は常に開いた状態にされていました。東電は雨水をためないためだと説明。規制委の更田(ふけた)豊志委員は「(たまった水が)雨水と決め付けて、開けておくなら何のための堰か」と批判し、当面は閉めるよう求めました。
また、東電が実施しているという1日2回のパトロールの問題も指摘されました。目視が中心で、水たまりがあっても、放射線量の測定をするのは「不自然な水たまりがあれば」というもの。線量測定の記録も残されていないことが分かりました。
タンクの汚染水の量を測る水位計もタンク群(5~6基)ごとに1個しか設置されておらず、タンク1台ごとの水位は正確に監視されていませんでした。
今回、汚染水漏れを起こしたとされるタンクは鋼鉄製で、半円状の鋼板をボルトで連結した構造。底板も5枚の鋼板をボルトでつないでいます。ボルトで連結したタイプのタンクは同原発に350基あり、うち約100基が問題のタンクと同時期に造られたものです。
更田委員は共通の要因で漏えいが起きた恐れがあるとして、同時期に造られたタンクにためた汚染水の移送にも言及しました。東電側は「(移送先の確保は)かなり厳しい。余力がない」と発言。汚染水対策のずさんな実態と手詰まり状態がいっそう鮮明になりました。
同型2基でも高線量 福島第1原発・・汚染水タンク点検
東京電力は22日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の敷地内にある、高濃度放射能汚染水を貯蔵しているタンクから大量の汚染水が漏えいした問題で、同型のタンクを点検中、別のエリアにある2基のタンクで、それぞれの地面との接合部で高い放射線量が測定されたと発表しました。検出された放射線量は毎時100ミリシーベルトと同70ミリシーベルトで、東電は汚染水漏れの可能性を否定していません。
東電によると、高線量が確認された場所は漏えいや水たまりは発見されず、乾燥していたといいます。また、タンクの水位は汚染水を受け入れた時から変化していないと説明しています。
2基は、漏えいがあったタンクから北西に約100メートル離れたタンク群にあります。