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緊急地震速報“誤報”のなぜ(上)・・速いP波で予測するが‥

13-09-02gohou8月8日の夕方、気象庁は大阪府と奈良県で最大震度6弱から7程度の揺れが起きるとして、関東から九州の広い範囲に緊急地震速報を発表しました。和歌山県北部でマグニチュード(M)2・3の地震が発生していたものの体に感じる揺れは観測されず、気象庁は「過大な震度予想」だったと認めました。南海トラフ沿いの巨大地震の発生などが懸念されるなか、緊急地震速報は重要な役割を果たすと期待されています。なぜ″誤報″は発生したのでしょうか・・。(間宮利夫)

地震が発生すると、揺れは主にP波とS波の2種類の波で伝わってきます。P波は進行方向に平行に振動しながら岩盤中を秒速約7キロで進むのに対し、S波は進行方向と直角に振動しながら岩盤中を秒速約4キロで進みます。地震計の記録で初期微動と示されているのがP波、主要動と示されているのがS波です(図1)。P波がカタカタと小刻みな揺れであるのに対し、S波がグラグラと大きな揺れであることがわかります。

緊急地震速報は、地震が発生したときに最初に伝わってくるP波を検知することで、その地震の震源や規模、全国を約190に区切った地域のどこが後から伝わってくるS波でどれぐらい揺れるかを予測し発表するものです。緊急地震速報に使われている地震計は、気象庁のものが220ヵ所、防災科学技術研究所のものが約800ヵ所に設置されています(図2)。

専用端末が必要

緊急地震速報には、高度利用者向けの予報と、一般の人向けの警報があります。予報は1カ所でも地震計がP波を検知し、解析の結果、最大震度が3以上と予想した場合に各地域で予想される震度や、到達時間を発表するもので、受信するには専用端末が必要です。警報は2ヵ所以上の地震計が一つの地震のP波を検知した場合に出されるもので、最大震度が5弱以上になると判断された場合に、震度4以上が予想される地域名を発表するものです。テレビやラジオ、携帯電話などでしらせるのは警報です(図3)。

震源が遠ければ遠いほど、緊急地震速報が発表されてから強い揺れが到達するまでの時間が長くなります。南海トラフなど陸地から離れた海溝沿いで巨大地震が発生した場合、東京、名古屋、大阪などの大都市では強い揺れが到達するまでに十数秒から数十秒の時間的猶予が生まれます。

しかし、震源に近い沿岸部では時間的猶予がごくわずかしかないこともありえます。地震計が海溝に近い海底に設置されていれば、海溝沿いで発生する巨大地震をより早く察知することができますが現在のところ、海底に設置されている地震計で緊急地震速報に活用しているのは5ヵ所だけです。気象庁では他の研究機関などが海底に設置している地震計も将来的に利用できないか検討しているといいます。

警報発表前に

一方、首都直下地震のように内陸の浅い場所で地震が発生した場合、震源近ではP波とS波の到達時間にそれほど差がありません。4月13日早朝、兵庫県淡路島付近でM6・3の地震が発生し、気象庁はP波を検知してから7・5秒後に兵庫県、香川県、徳島県、大阪府など2府14県に警報を発表しました。淡路市で震度6弱、南あわじ市で震度5強を観測しましたが、この地域では警報が発表される前に大きな揺れに見舞われました。
(つづく)

南海トラフの巨大地震 

東海から四国、九州の太平洋沖の海底にある海溝、南海トラフ沿いではM8級の東海地震、東南海地震、南海地震が100~200年置きに発生しています。これらの地震が連動した場合、M9級の地震が発生し、広い範囲が震度7の揺れに見舞われるほか、最大34メートルの高さの津波に襲われると想定されています。

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