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輸出狙う米国が圧力・・海外メーカーにも事故賠償責任法/インド輸入原子炉

インドが輸入した原子炉が事故を起こした場合、原発の運営者だけでなく炉を製造した海外メーカーにも賠償責任を負わせる法律があります。ところが最近、インドヘの原発輸出を計画中の米国から圧力を受けた政府が、この法律の適用を回避しようとしているとの報道があり、政府が火消しに追われる展開になりました。反原発団体は「政府は米国からの原子炉輸入を急ごうとしている」と警戒を強めています。(ニューデリー=安川崇 写真も)

反原発団体は警戒

この法律は2010年に成立した原子力損害賠償責任法(原賠法)。契約書に賠償責任について明記されていない場合でも、事故原因が▽原子炉などの欠陥▽メーカー側の誰かによる意図的な作為または不作為・・だった場合、運営業者だけでなくメーカーにも賠償を求められるとしています。

米国は07年の米印核協定でインドヘの原発輸出に乗り出しましたが、米原子炉メーカーがこの法規定に難色を示しているため、現在まで実現していません。米国政府はインド側に制度変更を強く求めています。

無効化の試み

報道は9月20日、主要紙ヒンズーが1面トップに掲載。「司法長官が最近、『運営業者の判断で、メーカーヘの賠償を求めないこともできる』と発言した。これを受けて政府が、この条項の無効化を試みようとしている」と伝えました。

これに野党が反応。「米国への手土産だ」(インド人民党)、「米国の圧力で、国会が制定した法を『希釈』しようとしている」(インド共産党〈マルクス主義〉=CPIM)と批判しました。

政府は「政府は国内法に従う。国益を害する決定はしない」(クルシード外相)「原賠法を薄める意図はない」(シン外務次官)と、説明に追われました。

原賠法が制定された背景には、1984年にインド中部ボパールで発生した米化学メーカー工場での毒ガス漏えい事故があります。死者2万人以上とされるこの事故では、インド側の約30億ドルの賠償請求(当初)に対し、米側からの支払いは5億ドル弱にとどまりました。最高幹部だった米国人は帰国し、インドでの刑事責任追及を回避しています。

世論に押され

原賠法案の審議中にはこの事故の遺族ら多数が首都ニューデリーを訪れ、反核団体とともに「多国籍企業の賠償責任を明記せよ」とデモを繰り返しました。

反核団体関係者は「政府は、賠償を法律に書き込めば海外メーカーが嫌がることはわかっていた。だが事故遺族や世論に押され、この条項を入れざるを得なくなった」と振り返ります。

シン首相は27日に米国内でオバマ大統領と会談予定。西部グジャラート州での原発新設に向け、米ウエスティングハウス社の原子炉を購入する協議が進行中で、「何らかの合意に達する可能性がある」(メディア)とみられています。

規定薄めたインド政府・・元デリー大学教授で反核活動家のアチン・バナイク氏の話

海外メーカーに賠償責任を負わせる法規定は世界でも珍しい。だが政府は、責任期間の限定や賠償額の上限などを導入し、この規定を「薄めて」きた。今、原子炉輸入に乗り気な政府が、この不十分な賠償責任すら回避させたがっているのは間違いない。首相訪米での動きを注視する必要がある。

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