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フランスで脱原発市民運動に参加・福島を訪問 アレクシー・クリステルさん/原発回帰と闘う人に会えてよかった

アレクシークリステルさん

原発大国フランスで、脱原発の市民運動に参加するアレクシー・クリステルさん(32)。昨春初めて福島県を訪れ、原発事故による壊滅的な影響を目の当たりにしました。日本で感じたこと、自身が取り組む活動について聞きました。(パリ=吉本博美 写真も)

 もともと日本に興味があったというクリステルさん。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、フランス国内で結成された日仏市民のNPO「遠くの隣人3・11」に参加し、原発の危険性を発信してきました。原発推進が国策のフランスで、福島原発事故の被害を正確に伝える報道はほとんどないと話します。

 「福島の人々、現地の様子がずっと気がかりだった」。在仏日本人から福島の人々を紹介してもらい、昨年4月に来日。福島県に計4日間滞在し、南相馬市、大熊町、双葉町、浪江町など各所を回りました。防護服をまといながら、放射線量が高く被害が残されたままの帰宅困難地域の住宅や小学校も訪問。今も放射能から身を守りながら暮らさざるを得ない地域があることに驚いたと振り返ります。

 大震災から14年が経過しても多くの避難民がいるのに、「順調な復興」をアピールし原発稼働を進める日本政府。「人々はもう諦めているのではと思っていたけど、現地で原発回帰に対して懸命に闘う、多くの人々に出会えたのは本当に大きかった」と語ります。

 原発事故の被害、どのような思いで生きてきたかを伝え続ける住民やアーティスト、事故の責任を問う訴訟団との交流を大切にし、再び福島を訪ねたいと話しました。

最終処分場に反対

 現在フランスでは北東部ムーズ県のビュール村に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が建設されようとしています。当地から50キロの都市部に暮らすクリステルさんは、地域の活動家たちと建設反対を訴えています。

 仏政府は、ビュールの地下500メートルの粘土層に国内の放射性廃棄物を埋めて集中管理する国家計画を推進し、フィンランドやスウェーデンに次ぐ地下処分場として操業を見込んでいます。しかし貯蔵容器の腐食による放射能漏れや火災の発生、地下水への影響など、すでに専門家から多くの危険が指摘されています。

 現在電力の約65%を原発で生産するフランスでは、1970年代から商業用原発の建設が広がりました。増え続ける放射性廃棄物をめぐり、最終処分場が3カ所にしぼられ、98年にビュールで調査のための地下研究所の建設が許可されました。

 2006年に地下処分場の建設に関する法律が定められ、ビュールに建設を許可する政令が1、2年のうちに出されそうな状況です。仏政府は経済的に豊かでない過疎地を中心に原発関連施設を作ってきました。

安全神話断ち切る

 クリステルさんは「市民の抵抗がなければ、あっという間にビュールで地下処分場の工事が始まっていたと思う」と指摘します。現地では40年来、座り込みや訴訟など、さまざまな形で反対運動が続けられてきました。

 日仏両政府に対し「事故が起きても対処できず、増える一方の放射性廃棄物も本当はどうしたらいいかも分からないのに、なぜ原発を続けるのか」とクリステルさん。原発の「安全神話」を断ち切るために、ビュールの周辺住民に向けて放射性廃棄物や地下処分場建設の危険性を伝え続けたいと話しました。

(「しんぶん赤旗」2025年3月24日より転載)