政府は18日、中長期のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。原発について従来の「依存度低減」の表現を削り「最大限活用」を打ち出しました。同時に閣議決定した「地球温暖化対策計画」は、2035年度の温室効果ガス排出量を13年比で60%削減という低い目標を盛り込み、日本の削減目標として国連に提出しました。(関連11面)
改定したエネルギー基本計画(エネ基)は、東京電力福島第1原発事故以降、政府自身が従来掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」の文言を削除。代わりに原発を再生可能エネルギーと合わせ「最大限活用する」と打ち出しました。財界や大手電力会社のかねての要求を丸のみしたものです。事故の教訓を投げ捨て、原発回帰をいっそう鮮明にしました。
さらに原発の新規建設について、岸田文雄政権が22年12月に決めた「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」で廃炉を決めた敷地内に限定していた条件を緩め、電力会社が同じなら敷地外でも可能にする方針にしました。新規の原発も「開発・設置に取り組む」としました。
40年度の電源構成では、原発の割合を「2割程度」。稼働基数で30基程度となり、現在、再稼働している14基の2倍以上です。太陽光など再生可能エネルギーの割合は「4~5割程度」に、LNG(液化天然ガス)や石炭などの火力発電を「3~4割程度」と維持・温存する方針です。G7(主要7カ国)で唯一、廃止期限を表明していない石炭火力は「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」などとしています。昨年末から実施された意見公募は4万件を超えました。
気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」は、気温上昇が産業革命前と比べ1・5度以内に抑える努力目標を掲げました。世界的な組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書では、1・5度以内に抑えるなら35年には13年比で66%の削減が必要としています。政府目標はこの値にも及びません。
「13年比60%」案が審議会で明らかにされてから、若者やNGO、企業グループなどから引き上げを求める声が相次ぎ、日本共産党も排出大国の責任にふさわしい「13年比75~80%削減」を求めて政府に要請。一方、経団連は政府と同じ目標を掲げました。意見公募は3千件を超えました。
(「しんぶん赤旗」2025年2月19日より転載)