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エネルギー基本計画 原発優遇の実相/原子力資料情報室事務局長 松久保肇さん(下)

さらなる国民負担も

 引き続き原子力資料情報室事務局長松久保肇さんの話です。

 第7次エネルギー基本計画(エネ基)の案は、原子力が「エネルギー安全保障に寄与」すると述べていますが、事実に反します。

不安定な供給

 原発の燃料であるウランの供給はロシア・ウクライナ戦争の結果として、不安定化しています。濃縮ウランの世界シェア4割ぐらいをロシアが供給していました。今は経済制裁で供給できなくなりました。なおかつ、ウラン鉱石は、カザフスタンが世界の4割を供給していましたが、ロシアの港を使っていたので、輸出が難しくなっています。供給不安からウラン価格も高騰しています。

 エネ基の案では、事業者に原発のような大型電源への投資を促進するために「制度措置や市場環境を整備する」としています。

 1、2年かけて審議会で、新しい制度作りが進められるのではないでしょうか。例えば、イギリスの場合、原発の建設費などを電気料金に上乗せして回収する制度(RABモデル)が導入されており、同じような制度の導入が懸念されます。さらなる国民負担となる可能性があります。

注目する必要

 原発にはすでにふんだんな支援が行われています。以前から電源3法交付金や研究開発費など多額の支援が行われてきました。さらに現在は、「長期脱炭素電源オークション」によって建設費などの比較的大きな金額を事業者が得ることができます。「容量市場」の制度でも、原発を維持することでお金がもらえます。しかし原発事業者は、それだけではまだまだ足りないという態度です。

 そういった議論が注目されていないのが大きな問題です。複雑な制度で分かりづらい議論だからでしょうが、もっと国民が注目する必要があります。(おわり)

(「しんぶん赤旗」2025年1月31日より転載)