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核ゴミ行き場なし 原発は停止しかない/貯蔵施設は満杯 ごまかしいつまで

 日本原燃は先月、使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)の27回目となる完成時期の延期を発表しました。着工から30年以上たち、運転の見通しは立っていません。再処理工場は、政府が固執する核燃料サイクル政策の中核施設であり、破綻は明らかです。行き場のない原発の使用済み核燃料。政府や電力会社はごまかしをいつまで続けるのか。(松沼環)

 政府は、原発の運転で出る使用済み核燃料を全て再処理し、ウラン、プルトニウムを回収して再利用する核燃料サイクル政策を進めるとしています。

■延期27回目

 原燃は、これまで2024年9月までとしていた再処理工場の完成目標を27年3月までに、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の完成目標も2

使用済み核燃料を再処理する六ケ所再処理工場=青森県六ケ所村

8年3月までに延期するとしました。再処理とMOX燃料加工の総事業費は、17兆5300億円に上ります。

 再処理工場は1993年に着工し、当初の完成予定は97年でした。度重なるトラブルで延期が繰り返され完成のめどがたっていません。再処理工場のプール(貯蔵施設)は、全国の原発から受け入れた約3000トンの使用済み核燃料でほぼ満杯。新たに使用済み核燃料を受け入れる余地はありません。

■たまり続け

 再処理工場が稼働しない中、全国の原発のプールには使用済み核燃料がたま

日本原燃六ケ所再処理工場の使用済み核燃料プール。満杯の3000㌧に近い量がすでに運び込まれています=2017年8月

り続けています。東電の福島第1、2原発(福島県)を除くと、各原発で貯蔵されている使用済み核燃料は6月末現在で計約1万2990トン。平均で貯蔵可能な容量の約75%に上ります。

 原発内の使用済み核燃料が満杯になれば、核燃料の交換ができなくなるため原発の運転ができなくなります。

■「計画」変更

 とくに福井県にある関西電力の高浜、大飯、美浜の3原発の使用済み核燃料の貯蔵量は、貯蔵容量の8割以上です。

 関電は昨年10月、運転ができなくなる事態を避けるため、再処理工場に運ぶ前に保管する中間貯蔵施設について、新たな立地地点を確保し、2030年ごろに操業を開始するとする搬出計画を示していました。

 福井県は以前から、関電に使用済み核燃料の県外搬出を求めていました。これに対し関電は、中間貯蔵施設の県外候補地を23年末までに示すと約束。確定できない場合には、運転開始40年を超えた3基の老朽原発(高浜1、2号機、美浜3号機)をその間、運転しないと表明していました。

 搬出計画は、中間貯蔵施設の候補地を具体的に示していませんが、26年度から六ケ所村の再処理工場に搬出を開始するとしていました。

 しかし、前出の再処理工場の完成延期で、搬出計画も変更が必要となりました。関電は今月5日、“福井県に25年3月までに新たな搬出計画を提示する。できない場合は40年超の3基の原発を停止する”と表明しました。

 発表から1年たたずに搬出計画の見直しが必要になったことに「原子力発電に反対する福井県民会議」は、県議会に老朽原発を停止するという当初の約束を関電に果たさせることなどを求める陳情を行いました。県議会でも「約束を反故(ほご)にした。原発3基を今すぐ止めて」との声が相次ぎました。

 佐藤正雄・前福井県議(日本共産党)は「知事は来年3月までずるずると稼働継続を認めようとしている。しかし県民の意思は、関電は約束どおり、3基を直ちに止めてほしいということです。そして、これ以上使用済み核燃料を増やさないために、原発はすべて停止すべきです」と話します。

 各電力会社は貯蔵能力の拡大などを計画しています。(表)

破綻した核燃サイクル

固執する政府 問題の先送り

 日本は原爆の原料にもなるプルトニウムを国内外に約44・5トン保有しています。日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」と内外に説明してきましたが、再処理ができたとしてもプルトニウムを利用する高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉に追い込まれました。

 プルトニウムを消費するために既存原発でMOX燃料を使うプルサーマル計画も現在4基の原発にすぎず、MOX燃料消費のめどはたっていません。

 元日本原子力研究開発機構研究員の岩井孝さんは「核燃料サイクルは破綻しており、MOX燃料を普通の原発で消費するプルサーマルでの核燃料サイクルはやるべきではありません。プルサーマルで発生する使用済みMOX燃料は、持ち出す先もなく、リサイクルに適さない。中間貯蔵はあくまでも再処理に持っていくための置き場所なので、中間貯蔵という考えは成り立ちません。どこかにもっていけばいいという考え方はやめるべきです」と話します。

 政府が固執する「核燃料サイクル政策」は、技術的見通しもなく、問題の先送りでしかありません。各社の使用済み核燃料の貯蔵能力の拡大は、その場しのぎの対応です。

 これ以上、破綻した政策に固執し、将来世代の負担を増大させることは許されません。

各原発の使用済み核燃料の貯蔵容量拡大計画

 九州電力玄海原発(佐賀県)=プール内の使用済み燃料の間隔を詰め約290トン分増やす工事中/使用済み核燃料を特殊な容器で貯蔵する乾式貯蔵施設を敷地内に設置する計画で約440トン分増。

 四国電力伊方原発(愛媛県)=乾式貯蔵施設で約500トン増強し、25年に運用開始予定。

 中国電力=昨年8月、島根原発の安定稼働のため山口県の上関原発建設予定地に関西電力と共同で中間貯蔵施設を建設するための調査実施を町に申し入れ。今年からボーリング調査開始。

 東電と日本原子力発電が設立したリサイクル燃料貯蔵=青森県むつ市に計約3000トンの使用済み核燃料が貯蔵可能な中間貯蔵施設を建設。東電柏崎刈羽原発(新潟県)の使用済み核燃料の最初の搬入がされようとしています。

 東北電力女川原発(宮城県)=敷地内に乾式貯蔵施設を建設し1380体増強する計画。

(「しんぶん赤旗」2024年9月25日より転載)