破裂した配管は、原発(加圧水型軽水炉)の二次冷却系といわれる主要配管です。直径が五十六センチもありながら、肉厚はもともと一〇ミリしかありません。この肉厚がわずか一・四ミリまですり減っていました。
■国の基準なし
この配管の検査についての国の基準はなく、各電力会社にまかされています。核燃料を直接冷却する一次系でないので、火力発電所と同じ扱いだというのが経済産業省の説明です。二次系とはいっても、原子炉の冷却にかかわる、重大事故につながる可能性のある配管です。原発の安全性にとって軽視されていいはずはありません。
美浜3号機が運転を開始してから十年後の一九八六年、米国の原発で、今回と同様の事故が起きました。タービン建屋内の配管(直径約四十六センチ)が破断し、高温水が蒸気となって噴出。八人が蒸気を浴びて火傷を負い、四人が死亡した事故です。
通産省(当時)はこの事故に関して、「日本では起こり得ない」とする報告書を八七年にまとめました。事故の教訓は生かされませんでした。
美浜3号機の製造を担当した三菱重工業は、米国の事故について八七年から調査を開始。九〇年五月、関西電力とともに、「原子力設備二次系配管肉厚の管理指針」を策定しました。この指針を適用すれば、今回破裂した配管部分も検査対象に含まれるはずだったといいます。
しかし、美浜3号機の検査を委託された三菱重工業は、美浜原発3号機の点検項目リストを作成したときに、問題の配管部分を抜け落とすミスを犯しました。
後に、ミスに気づいた三菱重工業は九九年四月と二〇〇〇年八月に、検査業務を九六年から引き継いだ「日本アーム」(関西電力協力会社、大阪市北区)にそのことを伝えたとしています。
しかし、日本アームが問題の配管部分の点検の必要性を関西電力に指摘したのは、〇三年四月でした。これにたいして関西電力は、日本アームから指摘があったのは同年十一月だったと主張しています。
■指摘あっても
関西電力は、日本アームからの指摘があっても、すぐに検査する対応をとりませんでした。何の根拠もなしに、“大丈夫”と判断し、今月十四日から予定されている定期検査まで点検を先延ばしにしたのです。
政府は電力会社まかせにし、電力会社はメーカーに丸投げし、メーカーも直接の検査には責任を負わない―。原発という重大な危険をともなう施設の安全管理の実態です。
根本には、原発の推進機関とは独立した規制機関の存在しない問題があります。国の責任で原発の安全を確保する体制がなく、電力会社の利益が優先される現在のあり方では、原発の安全が守れないことを、今回の事態は示しています。