新潟県の東京電力柏崎刈羽原発の再稼働へ国や東電が動きを強めています。専門家と新潟県民が一緒になって原発の安全性を検証する「市民検証委員会」は、実際に原発事故が起きた場合に安全な避難ができるのか、地域住民と避難シミュレーションを検証するキャラバンをスタートしています。
6月23日の新潟県新発田市を皮切りに、県内各地で開催する予定です。23日の集会には70人が参加しました。県「三つの検証」避難委員会副委員長を務めた佐々木寛・新潟国際情報大学教授がマイクを握り、「安全」を人まかせ、政府まかせでいいのか、原発の賛否にかかわらず避難の問題は共通の課題であり、住民一人ひとりが自らの問題として避難を検証しようと話しました。
未解決課題多く
元避難委員の上岡直見・環境経済研究所代表が講演し、県の避難計画では、柏崎刈羽原発から約80キロ
に位置する新発田市は30キロ圏内にある見附市から避難者約1万5千人を受け入れることになっているが、人口約9万2千人の新発田市で受け入れ可能なのかなど、未解決の課題が多いと指摘しました。
原子力規制庁が防災対策の前提としている放射性物質の放出量をもとに、2020年5月13日の実際の気象条件を適用したシミュレーションでは、柏崎刈羽原発から放出された放射性物質が、いったん海方向へ北上しても東向きの風に変わり、新潟市や新発田市まで到達し、避難が必要になる条件が発生するとの結果を報告。自分たちも避難が必要になる条件もあることを認識して避難のあり方などを考えることが大切だと提起しました。
自分ごととして
参加者は数人のグループに分かれ、自分や家族が避難する方法や避難経路、連絡や情報入手などの不安や課題を議論しました。「北方向に逃げるしかないが、新潟市からも避難してくるから渋滞で動けなくなるのでは」「一人で両親を抱えて逃げることはできないから避難を諦めるかもしれない」など、自分ごととして受け止めた真剣な議論が交わされました。
会場から「原発から5キロ圏(PAZ)、30キロ圏(UPZ)の区分ばかりが強調され、それより遠ければ問題はないと多くの市民が誤解している」「住民が当事者意識を持たなければ、いざ避難といっても人は動けない」などの意見も出されました。
(「しんぶん赤旗」2024年7月5日より転載)