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規制庁 公益通報つぶし/原子力施設の漏水トラブル 「不利益」強調 告発者が萎縮

原子力規制庁が入るビル=東京都港区

 原子力規制庁の公益通報の担当職員が、「(証言すると)不利益を被る」と、ことさらに「不利益」を強調して、公益通報を取り下げさせていたことが25日、本紙の取材でわかりました。こうした“公益通報つぶし”からは、同庁の姿勢が問われます。(矢野昌弘)

 通報したのは、警備会社ALSOKの社員でつくるALSOK労働組合の小又寛執行委員長です。

 小又さんが規制庁に通報したのは、川崎市麻生区の住宅街にある日立製作所王禅寺センタの放射線管理区域で起きた水漏れトラブル(2013年10月28日)についてです。

 この水漏れトラブルでは、ALSOKの子会社である昇日セキュリティサービスの警備員2人が、本来の業務ではないバケツへの水くみを日立の社員から命じられました。2人は、放射線管理区域内での得体の知れない大量の水を、手袋や線量計などをつけずにくみ出しました。

説得したのに

 警備員に代わって小又さんは22年7月に規制庁に公益通報し、同庁の原子力施設安全情報申告委員会事務局の男性職員が対応しました。この職員の要望に応じて、小又さんは警備員からの委任状や報告書を同庁に提出。同庁からの質問にも応じました。

 同庁は同年10月に「警備員に直接事情を聞きたい」と小又さんに要望。小又さんは、警備員を説得し、名前を明らかにして証言する約束を取り付けました。

 本紙は、同庁の担当職員と小又さんとの電話の通話音声を入手。

 職員「証言いただいた場合は、警備員の名前は向こうに出ざるをえない」

 小又「それも大丈夫です」

 職員「それじゃあ、不利益を被る可能性があるので。(でも)名前を出さないで(日立と)交渉することは無理なので」

 と、「不利益」を強調しました。そして職員は「追加で情報を聞きに行くことができないなら、この件は安全上の問題はないので調査を終了したい」と告げました。

 同庁が「不利益を被る可能性」の“了承”を求めていると聞いた警備員は「失業したくない。証言したくない」と一転しました。

 同庁は通報への対応要領で「誠実かつ公正に通報に対応しなければならず、通報の受付を拒んではならない」としています。

保護の話なし

 本紙の取材に同庁は「対象事業者に情報提供があったことを通知して調査を行う必要がある場合には、情報提供者が不利益を被る可能性が否定できないため、そのことを情報提供者が理解して下さっているか確認することとしています」と回答しました。

 小又さんは「私が警備員から証言の約束を取り付けた際、不利益の可能性も説明し、納得してもらった。それを規制庁が『不利益』とことさら繰り返せば、萎縮して当然だ」と反論します。

 また小又さんは「それに意思確認というなら、公益通報者保護制度があることも同時に説明すべき。そうしてこそ本来の意思確認だ。証言撤回に追い込んだ経過を見れば、“通報つぶし”は明らかだ」と指摘します。

(「しんぶん赤旗」2024年6月26日より転載)