佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が10日、核のゴミ最終処分地選定の第1段階にあたる文献調査を受け入れると表明しました。「国からの要請を熟慮した結果」だとのべています。
4月に町議会が文献調査応募を求める請願を採択し、7日には斎藤健経産相が町長と面会して調査実施を求めていました。「議会と自分の考えとの板挟みで悩んでいる」としていた町長に大臣がじかに迫ったもので事実上の押し付けです。
議会に請願が出されて以降、玄海原発対策住民会議、唐津市民の会など住民団体と日本共産党は、町長、町議会議長らに文献調査を受け入れないよう求めてきました。
原発がある自治体が調査を受け入れるのは初めてです。佐賀県の山口祥義知事は「最終処分場も含めて新たな負担を受け入れる考えはない」としています。
住民を無視した文献調査の押し付けも、受け入れも撤回すべきです。
■好ましくない地域
経産省が作成した最終処分場に関する「科学的特性マップ」では、玄海町はほぼ全域が「好ましくない」とされています。地下に石炭資源があるためで、最終処分場として不適切な地域なのは明らかです。調査実施に道理はありません。
最終処分場立地に向けて2002年から調査地点が公募されていますが、北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村の2地点での文献調査実施にとどまっていました。
原発回帰に踏み切った岸田文雄政権は「最終処分に関する基本方針」(23年4月閣議決定)で、北海道2町村以外に「複数の地域での文献調査の実施を目指す」とし「政府一丸」の取り組みを強めてきました。
これまでに全国100以上の自治体を、経産省、電力会社と最終処分実施事業者の原子力発電環境整備機構(NUMO)が協働で訪問しています。NUMOによる「最終処分に関する対話型全国説明会」が全国各地で開催され、昨年11月には玄海町でも行われました。昨年、文献調査受け入れ請願が採択された長崎県対馬市でも事前にNUMOが働きかけていました。
核のゴミは、極めて強い放射能をもち、万年単位での管理が必要とされています。四つのプレートがぶつかり合う日本に、そのような超長期に安定的な地層があるか、専門家からは疑問視されています。
■直ちに原発止めよ
持っていく先がない使用済み核燃料は各原発にたまり、原発の稼働継続に黄信号がともっています。使用済み核燃料の中間貯蔵施設を関西電力と中国電力が共同で山口県上関町につくろうとしていますが、問題の先送りにすぎません。
原発を使い続ければ処分困難な核のゴミが増え、問題はいっそう深刻になります。直ちに原発を止めるべきです。核のゴミ処分も原発も行き詰まりは明らかです。既定路線にとらわれず根本的に見直すべきです。
エネルギー基本計画の見直し議論が始まります。地震国日本に原発は危険すぎます。気候危機対策も急務です。原発ゼロ、石炭火力発電の期限を切った計画的な廃止、省エネルギーと再生可能エネルギーを軸にしたエネルギー政策へと転換させなければなりません。
(「しんぶん赤旗」2024年5月12日より転載)