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玄海町長 核ごみ調査受諾

立地自治体で初 処分地選定 第1段階

 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向け第1段階にあたる文献調査を受け入れると表明しました。原発立地自治体では初。文献調査は北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で実施され、3例目となります。

 脇山町長は同日午前中に非公開で開かれた町議会の全員協議会で受け入れの考えを述べ、終了後、経産省に電話で伝えたといいます。その後、記者会見し「町議会などの意見や国からの要請を熟考した結果、文献調査を受け入れる決断に至りました」と述べました。

 また、7日の斎藤健経済産業相との面会に触れ、「文献調査が処分地選定に直結するものではないという言葉・言質をいただいた。住民にとって心配があるかと思うが、なし崩し的に最終処分場になることはないと思う」との考えを示しました。

 文献調査を受け入れた町は国から最大20億円の交付金を受け取ることができます。これについて脇山町長は「お金目的で調査を受け入れるつもりはない」とも説明しました。

 文献調査は公募か、国からの申し入れを受け入れるかで実施され、最終処分場の候補地選定に向けた手続きの第1段階。ボーリング調査などを行う第2段階の概要調査には知事の同意が必要です。山口祥義(よしのり)知事は「新たな負担を受け入れる考えはない」としています。


町民が抗議 何も知らされていない

町内の宣伝行動で訴える井上前県議(左端)=10日、佐賀県玄海町

 佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が「核のごみ」の最終処分場選定に向けた文献調査の実施受け入れを表明した10日、町役場前には受け入れに反対する市民らが集まり、「文献調査受け入れ反対」と書かれたプラカードなどを掲げて抗議の声を上げました。

 受け入れ表明は非公開の町議会全員協議会で行われ、その後の記者会見で脇山町長は、「受け入れを求めた請願を採択した議会の判断を重く受け止める」などと述べました。

 町長が受け入れを表明した直後、町役場前では参加者がハンドマイクを使って次々に訴えました。日本共産党の井上祐輔前県議は「マスコミにすら非公開で町民に十分な説明もない中、受け入れを判断した。玄海町の3分の1もの面積が核のごみで埋まるという計画で農業や観光など町の魅力を生かすことができなくなってしまう」と訴えました。

 その後、参加者は町内2カ所でも町長の受け入れ表明を批判する宣伝をしました。

 自作の絵を役場入り口に掲げ、受け入れ反対を訴える同町の藤井節さんは「住民は何も知らされていません。テレビで急に今日決まることを知りました。町民が納得していないのに決めるなんて」と話しました。


地方に押しつけやめよ 発生源の原発ゼロこそ

 佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日の会見で、文献調査受け入れを求めた請願を町議会が採択したことを重く受け止めたと強調し、受け入れに反対する請願もなかったと語りました。

 しかし、今回の請願は、1回目の審査が4月17日、10日後の同月26日の本議会で採択されました。この間、住民に向けた説明会などもなく、きわめて拙速に採択されました。

 それでも特別委員会の当日には、文献調査に反対する市民らが庁舎前で横断幕などを掲げて抗議。また、市民団体や日本共産党の玄海支部・後援会が受け入れに反対する要望書などを町や町議会に提出していますが、そうした市民らの意思は無視されています。

 17年度に政府は、国内の3分の2の地域が最終処分場に適しているとする「科学的特性マップ」を作成し、全国各地の自治体への働きかけを始めました。

 その特性マップで玄海町の地下には石炭が埋蔵され、ほぼ全域が処分場所として「好ましくない」とされています。さらに、メタンガスの発生の懸念もあることから、石炭層を岩盤とする場所に処分場を建設するのは無謀な行為と専門家が指摘しています。

 核のごみの処分方法が定まらないまま原発を進めてきた矛盾を、経済の衰退などに悩む地方に押し付けるのは許されません。

 問われるべきは、核のごみの発生源である原発をどうするかです。それは棚上げされたままです。核のゴミを増やさないためにも、原発の運転を中止し「原発ゼロ」に踏み切るべきです。

 (松沼環)

文献調査を巡る動き

4月4日 町議会が文献調査受け入れを求める3団体の各請願を受理

17日 町議会原子力対策特別委員会で請願審査(資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構=NUMOが説明)

25日 同特別委員会で請願審査、賛成多数で3請願を一括採択

26日 町議会本会議で請願を賛成多数で採択

5月1日 資源エネルギー庁幹部が調査実施を申し入れ

7日 斎藤健経産相が脇山伸太郎・玄海町長と経産省で面会し、調査受け入れの検討を要請

10日 脇山町長が調査受け入れを表明

(「しんぶん赤旗」2024年5月11日より転載)