大手電力会社が再生可能エネルギーの発電事業者からの電力の受け入れを一時的に停止する出力抑制が急増しています。電力需要より、原子力、火力、再エネなどの発電による供給が上回り、需給バランスが崩れ、「大規模停電などにつながるのを回避するための措置だ」としています。再エネで発電した電力を捨てていることは大問題です。
給電ルールの見直し必要
経済産業省が定めている「優先給電ルール」は、火力発電の出力抑制、水をくみ上げて蓄電する揚水の活用、他地域への送電などを図りつつ、太陽光発電、風力発電の出力抑制をするとしています。一方、原子力発電の出力抑制は技術的に困難だとしています。
再エネの出力抑制量は、2021年度は九州エリアのみで約5億3500万キロワット時でした。22年度は北海道、東北、中国、四国、九州、沖縄エリアに広がり合計約5億7300万キロワット時でした。23年度は4月から10月までで東京エリア以外で実施され、合計で約15億700万キロワット時と急増しました。
経済産業省は23年度の再エネ出力抑制は17億6000万キロワット時の見通しとしています。
NPO法人自然エネルギー市民の会は、「約41万世帯の年間消費量に相当する。家庭での平均電力料金(約27円/キロワット時)をかけると475億円分の価値がある」としています。
同会は、再エネの出力抑制は、発電に必要な燃料代がほぼゼロの電力を無駄に捨てることであり、無制限、無補償で実施されるため、再エネ発電設備の所有者に不利益をもたらすと批判しています。
内閣府の再エネタスクフォースは、主に再エネに出力抑制を行わせる現行の「優先給電ルール」は「無駄」を引き起こし、電力消費者に大きな負担をかけていることを課題に挙げています。
欧州連合(EU)では、再エネ指令(09年)で、再エネ電源の優先給電が明確に義務づけられ、石炭火力や原子力の出力抑制が行われます。一方、日本では、大手電力、原発利益共同体の要望にもとづき、原発優先、火力発電温存のルールになっています。
再エネを供給量の調整弁にすることは、普及・拡大の重大な障害です。原発優先と火発温存をやめ、再エネ最優先のエネルギー政策への転換が求められています。
昨年末アラブ首長国連邦で開かれたCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)では、「30年までに再エネの設備容量を3倍にする」誓約に日本も含め120カ国以上が賛同しました。
21年の発電電力量に占める再エネの割合は、EUの37・1%やスペインの46・3%、イタリアの40・3%などと比べ、日本は20・3%にとどまります。再エネ導入目標も30年度に36~38%と、EUがすでに到達しているのとほぼ同水準の低いものです。
気候危機対策に逆行
再エネの出力抑制は、「3倍化」どころか、再エネの事業環境と投資を不利にし事業をつぶす方向に働くことになり、気候危機対策に逆行しています。
原発ゼロ、石炭火力発電所の廃止が必要です。地域に根ざした持続可能な経済の発展に寄与する再エネ普及を後押しする政策へと転換すべきです。
(「しんぶん赤旗」2024年2月5日より転載)