きょうの潮流

 原子力規制委員会が新潟県に立地する東京電力柏崎刈羽原発の「運転禁止命令」を解除しました。解除決定と合わせ東電に対し、「運転を適格に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はない」という、原子力事業者としての適格性も認めました▼社員が他人のIDカードを使って中央制御室に入る、第三者の侵入を検知する設備の故障を放置する―。不備が発覚し運転禁止命令を受けた後も、放射能汚染水を処理する設備の配管を洗浄していた作業員が高濃度の廃液を浴び、2人が入院する事故などが相次いでいます▼規制委の判断は妥当なのか。適格性では「福島第1原発の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟」などの姿勢を確認したといいます▼しかし、福島第1原発の海洋放出では、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」とする漁業者との約束を反故(ほご)に。東電は国が判断したことだからと、自らの考えを示さず国いいなりの姿勢。主体性などみじんもありません▼もとより重大事故を起こした東電に原発を再び動かす資格があるのか、です。事故の損害賠償を求める裁判で、津波対策を先送りした東電に「原発の安全対策についての著しい責任感の欠如を示すもの」と指摘した判決もありました▼規制委は「お墨付きを与えたというつもりはない」といいます。ところが政府はさっそく、再稼働に向け地元の理解を得られるよう説明したいと前のめりです。原発優先政治の転換は来年に向け、いよいよ大きな課題です。

(「しんぶん赤旗」2023年12月30日より転載)