原発回帰にかじを切った岸田文雄政権は、新たな原発建設を掲げるとともに、漁業者などとの約束を破り、福島第1原発の汚染水(ALPS処理水)の海洋放出を強行しました。
さらに、アメリカなどとともに世界の原発を2050年までに3倍化すると宣言しました。再稼働の加速も企てています。福島原発事故は収束が見通せず、多くの人が今も苦しんでいるのに問答無用で原発推進にまい進する岸田政権を許すことはできません。
将来世代につけを残すな
原発3倍化宣言は12月初め、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)にあわせて出されました。気候危機対策を口実に、世界の原発の発電能力を現在の3倍、約12億キロワットにするとしています。日米欧で廃炉が相次ぐ中、世界の原発市場は、中印ロが席巻している状況です。宣言の背景には、原発市場を取り戻したい日米欧の原発業界の要求があると言われます。日本の原発業界も、西村康稔経済産業相(当時)が技術・製品・人材で貢献すると述べたように(12月5日会見)、原発輸出でもうけようとしています。
原発を3倍化するには、100万キロワットの原発で毎年30基以上、小型の20万~30万キロワットなら毎年100基~200基というハイペースでの建設が必要です。環境NGOから、「全く現実的でない」と批判されるのは当然です。原発を増やせば、使用済み核燃料など処分困難な「核のゴミ」が増え、将来世代に大きなつけを残すことにもなります。
岸田政権が強行した原発推進5法(GX電源法)は、運転期間延長のために上限60年を緩和するとともに、原発業界支援を国の基本的施策として位置づけました。国家的な支援が必要とされるほど、原発業界が立ち行かなくなっていることの表れです。
原発メーカーが力を入れた外国での建設計画は、費用の高騰でことごとく失敗しました。東芝は、世界市場でもうけようと買収したアメリカの老舗原発メーカーのウェスチングハウス社の破綻で債務超過に陥り、上場廃止に追い込まれました。原子炉や核燃料関係など重要な部分で廃業や事業撤退も相次いでいます。
世界の流れは、原発ではなく再生可能エネルギーと省エネルギーの拡大・普及です。COP28では、再エネを30年までに3倍化し、エネルギー効率の改善を倍加するとの宣言に120カ国以上が署名しました。日本政府も参加しましたが、伊藤信太郎環境相は「3倍にする容量があるとは考えていない」(12月3日NHK日曜討論)と、国内での実施には後ろ向きです。
省エネと再エネ優先で
いま日本では、電力の2割以上を太陽光発電など再エネで供給しています。省エネを進めつつ、30年までに再エネ比率を5割にし、さらに100%をめざすことが求められます。ところが、原発を優先して再エネ発電を止める回数が増えています。原発が再エネ拡大の障害となっています。
来年は、政府のエネルギー基本計画の見直し議論が行われます。原発でなく省エネと再エネ優先へと転換させましょう。原発ゼロの日本をめざし、原発に固執する岸田政権を退陣に追い込み、自民党政治を終わらせましょう。
(「しんぶん赤旗」2023年12月31日より転載)