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原発事故避難者の2023年たたかい(下) 推進転換 安全な社会を 「原子力ムラ」いいなり批判

公平な審理を求める最高裁要請後の報告集会=10月17日

 公害被害や中国残留孤児など人権裁判に長年関わってきた、福島原発被害弁護団共同代表の小野寺利孝弁護士は「ふるさとを奪われ新しい場所で生活することがどんなに大変か想像してほしい。被害者は『自分たちのような人を二度と出してくれるな』と訴え続けている」と語ります。

過失責任がある

 「国は国策として危険な原発を推進し、過酷事故を防止しなかった過失責任があるにもかかわらず、最高裁は国の法的責任を否定した。これは司法の役割を放棄している」と、強く懸念します。司法に国の責任を認めさせるたたかいは「三権分立である日本の民主主義を守るたたかいでもある。絶対負けるわけにはいかない」と強調します。

 最高裁は本来、下級審の法令解釈に誤りがあるかを判断する場所で事実認定は下級審が行います。しかし、昨年の最高裁判決は「あろうことか下級審の事実認定と異なる事実を認定したうえで、『必ずしも事故を防げたとは言えない』と判断した」と指摘します。

 小野寺さんは「人権裁判闘争では主戦場は法廷の外(国民世論)にある」と力を込めます。反原発運動をしてきた宝鏡寺(福島県楢葉町)の故早川篤雄住職は最高裁判決前に、「大衆的な裁判闘争になっていない」と指摘していたといいます。原告の主張を支持する国民世論を大きく高め「人権擁護の最後の砦(とりで)である最高裁の役割を果たさせる」と決意を語りました。

市民連絡会発足

 国民世論を広げていくため11月には最高裁に公平な審理を求める「ノーモア原発公害市民連絡会」が発足しました。世話人事務局を務める寺西俊一・一橋大学名誉教授は、福島事故から12年がたち国民の関心が薄れていると感じ、「警告を発しないと大変なことになる。原発の危険性に気づいている市民が動かなければならない」と語ります。

 「政治とカネ」の疑惑が明るみに出ている岸田文雄政権。環境経済学を専門とする寺西さんは、原発推進の背景にも原発で巨額の利益を得る「原子力ムラ」と政治の関わりがあると指摘します。「原発推進の『原子力ムラ』のいいなりになっている政府を、国民が批判できないようでは日本の未来はない」と訴えます。

 「最高裁判決が国の原発推進政策にお墨付きを与えている。国の責任を認める新たな判決を勝ち取り、原発政策を転換させなければならない。原発ではなく再生可能エネルギーへの転換で将来世代が安心・安全に暮らせる社会にしていこうと呼びかける運動だ」と語ります。(おわり)

(「しんぶん赤旗」2023年12月30日より転載)