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原発事故避難者の2023年たたかい(上) 屈したら再び被災起きる 最高裁は「国の責任を認めよ」

東京電力福島第1原発1~4号機=2011年3月15日(東京電力提供)

 東京電力福島第1原発事故の教訓を投げ捨て、岸田文雄政権は原発回帰に大きくかじを切りました。原発被害者が国と東電に損害賠償を求めた原発避難者訴訟の原告や弁護士らは、最高裁で国の責任を認める判決を勝ち取るたたかいを続けています。「たたかいに屈したら再び事故が起きる」―。その思いを聞きました。(小林圭子)

 たたかいの出発点は、昨年6月に出された同種の四つの集団訴訟の最高裁判決にさかのぼります。判決では「津波対策を講じていたとしても、事故が発生した可能性が相当にある」とし、国を免罪しました。

 この判決に忖度(そんたく)するかのような高裁判決が今年3月、いわき市民訴訟の仙台高裁で出されました。判決では「規制権限の行使を怠った国の責任も重大である」としながら、「取られる防護措置によっては、重大事故を防げたとは断定できない」とし、国の責任を認めませんでした。

最高裁に公平・公正な審理を求める、いわき市民訴訟原告団・弁護団の請願行動で訴える伊東原告団長=8月、最高裁前

原発推進方針

 岸田首相は2月、原発の「最大限活用」を掲げ、新増設や老朽原発の運転延長を進める方針を発表。5月には原発推進を「国の責務」として、原発の60年超の運転を認める法律が成立しました。

 いわき市民訴訟の伊東達也原告団長は、「政府、国会、民間の三つの事故調査報告書は原発事故を“人災”としていたにもかかわらず、最高裁判決は“天災”として、国を無罪放免にしてしまった」と憤ります。

 教員時代からいわき市内の公害問題に取り組み、教員を退き日本共産党の地方議員になってからは公害問題だけでなく原発の危険性を訴え続けてきました。2005年には原発問題住民運動全国連絡センター(原住連)の筆頭代表委員として、福島原発が1960年に発生したチリ地震規模の津波で冷却水を確保できないことを明らかにし、震災前に東電や国に対し、抜本的対策を求める陳情書を提出していました。

 「このままではとんでもない事故が起きると確信をもって原発の危険性を訴えてきた者として、最高裁の判決には、はらわたが煮えくりかえる」と悔しさをにじませます。

公平な審理を

 最高裁判決を出した菅野博之裁判長は判決翌月に退官し、東電株主訴訟で東電の代理人を務める弁護士が所属している巨大法律事務所の顧問に就任しました。

 伊東さんは「最高裁への国民の信頼が揺らいでいる」と指摘します。昨年の最高裁判決は国民の支持を得ていないと強調し、国民に改めて原発の危険性や放射性廃棄物などの問題を考えてもらう転機だと捉えています。

 いわき市民訴訟の原告は高裁判決を不服とし最高裁へ上告しています。8月から毎月1回、公平な審理を求める最高裁要請と集会を開いています。「もう一度粘り強く訴えれば、3・11で学んだ教訓を生かせる時が来る」と力を込めます。(つづく)

(「しんぶん赤旗」2023年12月29日より転載)