東京電力福島第1原発事故で福島県から東京都内などに避難した17世帯47人の住民が東電と国に計約6億3500万円の損害賠償を求めた東京訴訟第2陣の控訴審判決が26日、東京高裁(三角比呂裁判長)でありました。国の責任を認めた2018年の一審東京地裁判決を一部取り消し、国の責任を認めませんでした。
三角裁判長は、事故前の津波対策は防潮堤の設置が基本だと指摘。02年に国の機関が公表した地震予測「長期評価」による想定津波と実際の津波の規模などは異なり、想定津波に基づく防潮堤では敷地への海水侵入が防げなかった可能性が高いとしました。建屋への浸水を防ぐ水密化など原告が主張した防潮堤以外の対策を退けました。
その上で三角裁判長は、経済産業相が規制権限を行使し、東電が津波対策を講じても「同様の事故が発生するに至った可能性が相当あるといわざるを得ない」と結論づけ、国の責任を否定しました。
原告は、11年3月当時、福島県福島、郡山、いわき、田村各市に居住。ほとんどが避難指示区域外からの避難者です。
判決は東電に対し44人に計約2350万円の支払いを命じました。計約5900万円の支払いを命じた一審より大きく減額しました。
同種の四つの集団訴訟で、国の責任を否定した昨年6月の最高裁判決後、国の責任を判断した4件目の高裁判決。いずれも国の責任を認めませんでした。
判決後に原告らは記者会見し、弁護団共同代表の中川素充弁護士は「(判決は)最高裁判決と同じ論理、コピペといってもおかしくないような内容」だと指摘。賠償では「なぜ減額したのか。理由が全く書かれていない、理不尽な判決。最後まであきらめるつもりはない」と述べました。
いわき市から避難した原告団長の鴨下祐也さん(55)は「国の責任なしとされてしまった、放置できない判決」と語り、原告の鴨下全生(まつき)さん(21)も「原発は国策で動いていた。動かしていた責任が国に全くないと司法が言い切りました。私たちは被害を救済するよう、どこに申し出ればいいのか」と、涙ながらに訴えました。
(「しんぶん赤旗」2023年12月27日より転載)