日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 汚染水「漁業者が衰退」 福島 いわき市漁協組合長語る 共産党懇談

汚染水「漁業者が衰退」 福島 いわき市漁協組合長語る 共産党懇談

汚染水の海洋放出問題で話す江川氏(右から2人目)と(左側奥から)宮川、吉田、熊谷の各氏。右端は新妻隆専務理事=28日、福島県いわき市

 東京電力福島第1原発から出る汚染水(アルプス処理水)の海洋放出が始まり、福島県内外の漁業関係者から怒りと不安の声が広がっています。日本共産党の宮川えみ子、吉田英策両県議、熊谷智いわき・双葉地区委員長は28日、いわき市漁業協同組合の江川章代表理事組合長と懇談し、思いを聞きました。「福島県の漁業を守って生活し、国益を担ってきたわれわれ漁業者が衰退してしまう」と両県議に訴えた、江川組合長の発言を紹介します。

 「処理水」の海洋放出開始に対し、中国が日本産水産物を全面的に輸入停止すると表明したことが問題になっています。いわき市の水産物だと仙台市の業者が買って対外的に輸出するが、その業者が中国への輸出を難しいと判断すれば、浜値は安くなります。

 風評に備え国が積み立てた800億円について、中国との貿易などで生まれた全国的な損失が対象になると、いわき市の沿岸底引きのような小さい船で行う小規模漁業にはほとんど来ないのではないかと恐れます。

 原発事故の原因の一つはマグニチュード9・0の巨大地震による大津波が堤防を越えて襲ってきたものでしたが、そもそも東電と国は経済優先で原発敷地を低く切り下げたのです。昨年、国が原発稼働年数を延長したことも経済優先で、考えられないことです。

 地球温暖化の影響で日本近海での台風発生が増え、規模も今ではハリケーン並みです。千島海溝や日本海溝で巨大地震が発生し大津波が来たら、福島第1原発だけでなく、第2原発はどうなるかと考えてしまいます。「処理水」を保管しているタンクが損壊することだって考えられる。そのとき「想定外」という言葉を使わないでほしい。敷地を確保し丈夫なタンクに移し替えるべきです。

 「処理水」の海洋放出によって、後継者たちは「先行きが暗い」と嘆いています。魚価の低下はどうかとか、売れない時期がどれだけ続くかとか分からないことが多い。

 東電は原発事故以降だけでもトラブルを多発させています。今は緊張感を持ってやっているだろうが、2、3年したらどうなるか分からず、不安は強い。

 後継者がやっていくには壁がいくつもあります。新造船の単価も高くなりました。1992年に私の船は12トンで約5700万円、31年たった今では9トンで約1億8000万円です。それだけの金を最初にいわゆる「見せ金」として用意しておかなければならない。そのために二の足を踏んでいる人も実際います。そこに「処理水」海洋放出がからみます。

 漁業者が安心して働ける海にしてほしい。

(「しんぶん赤旗」2023年8月30日より転載)