日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 原発汚染水放出・・説明尽くさずに強行 政府を財界が後押し

原発汚染水放出・・説明尽くさずに強行 政府を財界が後押し

 東京電力が福島第1原発にたまり続ける汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を始めました。しかし、漁業者など関係者の理解はまったく得られていません。汚染水の増加をくいとめるための真剣な対応も行わず、漁業者らとの約束も反故(ほご)にした海洋放出には全く道理がありません。

●約束を反故

 政府と東電は8年前に「漁業者など関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を福島県漁業協同組合連合会と交わしています。しかし、政府や東電は、これまで海洋放出についての説明や対話の手だてを尽くしてはきませんでした。

 21日に岸田文雄首相と面会した全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長は「海洋放出については依然として反対するという立場を堅持する」と明言。直近の世論調査でも、海洋放出に対する賛否は拮抗(きっこう)しているうえ、政府の説明が「不十分だ」と答えた人は81・9%(「共同通信」)にのぼっています。

 岸田首相は21日の全漁連の坂本会長との会談で「廃炉と処理水排出の完遂まで漁業者のなりわいが継続できるよう、国が全責任を持って必要な対策を講じ続ける」などと主張していますが、約束を反故に海洋放出を強行していては何の説得力もありません。

●もうけ優先

 一方、海洋放出の結論先にありきで暴走する政府の姿勢を強力に後押ししてきたのが、財界です。

 政府が海洋放出方針を決めたのは2021年の菅義偉政権の時です。菅首相(当時)は関係閣僚会議で「処理水処分は廃炉に避けて通れない課題。海洋放出が現実的と判断した」と説明。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「安全性については十分考慮されているのではないか」と歓迎のコメントをしています。

 岸田政権に代わってからも、今年7月には、経団連の十倉雅和会長が、海洋放出に関する国際原子力機関(IAEA)の報告書をあげて「処理水が安全基準を十分に満たすことを示しており、意義深い」と評価。日本商工会議所の小林健会頭は政府の海洋放出決定を「福島第1原発の廃炉と福島再生を完遂する上で避けて通れない取り組みだ」と後押ししています。

 岸田政権は昨年末、財界要求にあわせて、新規原発建設推進や老朽原発の運転を認める「原発回帰」に大転換する方針も決定。国民的議論も避けて、結論先にありきの暴走を加速させています。

 しかし、福島原発事故では、多くの人が避難を強いられ、今なお苦しんでいます。こうした事故の反省も教訓も投げ捨て、財界のもうけ優先に国民の生命と財産を危険にさらすことは到底、許されません。

(「しんぶん赤旗」2023年8月25日より転載)