東京電力福島第1原発事故で出た「アルプス処理水」(高濃度のトリチウムを含む汚染水)の海洋放出計画をめぐって事態が緊迫するなか、東電の廃炉・汚染水対策の責任者が29日、地元や国内外での理解の醸成について、放出を実施するための必要条件ではなく「十分条件」だと述べました。処理水について「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」とした地元漁業者との約束を軽視する発言で、原発事故の加害者としての責任が問われます。
同原発では、海洋放出のための設備の設置工事が26日に完了。28日から原子力規制庁による使用前検査が行われています。漁業者をはじめ国内外から反対や懸念の声があがっていますが、岸田文雄政権は今年夏ごろまでに放出を開始する方針を一方的に決めており、近く放出時期を判断するとみられています。
29日の記者会見で、東電の福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表(廃炉・汚染水対策最高責任者)は、放出にむけた政府の判断に何が必要かと問われ、(1)設備の設置完了(2)使用前検査の合格証の発布(3)国際原子力機関(IAEA)の包括報告書の三つが「必要条件だ」と答えました。
そのうえで、小野氏は、理解の醸成を「詰めていかなければならない十分条件」だとして、「地元をはじめとするいろいろな皆さまのご懸念を払しょくするために、どういうことを考えているか、どういうふうにアルプス処理水の処分を行うのかということを含めて、懸念に対応したしっかりとした説明を尽くしていく」と述べました。
さらに「関係者の理解」の意味について「特定の指標で測るのは困難」としながら、「最終的な判断は、国とも連携させていただきながら考えていくことになる」と述べました。
(「しんぶん赤旗」2023年7月1日より転載)