東京電力ホールディングスは28日の株主総会で、福島第1原発事故で出た「アルプス処理水」の海洋放出をめぐり、東電が福島県漁連に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束したことについて「この方針を順守してまいります」と改めて説明しました。一方、総会では、「処理水」の海洋放出をしないことを求めた株主提案は否決されました。
総会で、事前の質問に答える形で報告した山口裕之副社長は「廃炉作業を進めるため、処理水の処分は決して先送りできないものと認識」と強調。株主からは「今月には放出設備の試運転を始めた。漁業者との約束を踏みにじり、欺くもの」と厳しい批判の声がありました。
アルプス処理水は、原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水で、政府と東電は、処理水を海水で基準値未満に希釈して放出する計画。政府は放出開始を今年「夏ごろ」という方針を示しています。
小早川智明社長は、政府が2021年4月に決めた海洋放出の基本方針の「着実な実行に向けて取り組みを進めている」と報告し、「懸念を一つひとつ払しょくする」と述べました。
また、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働について小早川社長は、テロ対策不備の問題で原子力規制委員会の追加検査の途上にあり「再稼働の時期を申し上げる段階にない」と述べました。
株主提案では、GX(グリーントランスフォーメーション)推進において原子力の除外を求めるものなどがありましたが、すべて否決されました。
(「しんぶん赤旗」2023年6月29日より転載)