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政権追い詰めた市民と共産党 通常国会150日(4) 原発回帰 狙いは原子力産業の優遇

事故の収束も見通せない東京電力福島第1原発=2021年2月5日、本紙チャーター機から撮影

 「もう二度と、自分たちと同じ思いをする人をつくりたくない」。そんな原発被害者の思いも、原発事故の教訓も踏みにじり、原発回帰にかじを切った岸田政権に、被災地をはじめ全国から「福島を忘れるな」と厳しい批判の声が上がっています。エネルギー危機や脱炭素を口実に原発回帰するその本当の狙いとは―。

検討の加速指示

 原発事故後、歴代政権が「原発依存度を低減する」としてきた方針を一転させたのは、昨年8月。岸田文雄首相が議長を務め、エネルギー安定供給と脱炭素社会の実現を話し合う「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」でのこと。首相は、原発の新増設や運転期間延長などの検討の加速を指示したのです。実行委員には経団連の十倉雅和会長や中部電力会長が名を連ね、それらを要求していました。

 政府は昨年末、原発の「最大限活用」を掲げたGX基本方針を決定。同方針を具体化する原子力基本法改定案など5本の法案を束ねた「原発推進等5法案」と、「GX推進法案」を国会に提出しました。

 改定原子力基本法は、福島原発事故を「真摯(しんし)に反省」すると明記した一方、原発活用を「国の責務」とし、原子力産業の「安定的な事業環境整備」など国の支援を列挙。日本共産党の笠井亮衆院議員と岩渕友参院議員は国会で、改定の中身は電力会社や原子力関連企業でつくる日本原子力産業協会の提言そのもので、「原子力産業への優遇策だ」と厳しく追及しました。

教訓を投げ捨て

 さらに、改定法は、原発事故の教訓から定められた「原発運転期間の原則40年、最長60年」「規制と推進の分離」をも投げ捨てました。

 運転延長の認可権限を原子力規制委員会から推進側の経済産業省に移行。70年超の運転さえ可能とします。規制委の山中伸介委員長は「運転期間は利用政策の問題」と無責任な答弁に終始しました。

原発“新・安全神話”に警鐘

財界の要求丸のみ

 また、GX推進法は資金面でも支援します。原発や石炭火発アンモニア混焼などへの投資を呼び込むため、10年間に20兆円もの新たな国債を発行するとしています。

 原子力産業や財界の要求を丸のみした内容に市民団体などからは「原子力産業“救済”法」との批判も。日本共産党は、改定法は「原発を固定化・永続化する」「新たな安全神話だ」と警鐘を鳴らしました。

世界は再エネへ

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書は、現状のままでは2030年までに温室効果ガスの排出量が限度に達すると警告しています。

 参考人は、世界の主流は再エネだと強調。再エネに比べコストが高く、二酸化炭素(CO2)排出削減効果の低い原発は「気候危機打開に間に合わない」「競争力がない」ときっぱり。笠井氏も衆院本会議採決の反対討論で、「経済界、産業界からも再エネ100%の取り組みへの期待や需要が高まっている」と強調しました。

 岩渕氏は首相への質疑で、「GX基本方針は、見せかけの気候変動対策だと感じる。気候変動の被害に苦しんでいる人や将来世代の声に耳を傾けてほしい」という若者の声を突きつけました。

メリットは破綻

 もはや、安定的で安いとされた原発のメリットは破綻しています。原発事故を真摯に反省するというのであれば、事故の収束も見通せない原発はゼロにし、再エネ・省エネへと大転換することこそが、エネルギー安定供給と気候危機打開への道です。

(「しんぶん赤旗」2023年6月27日より転載)