原発の再稼働や新増設、運転期間延長など原発回帰の姿勢を鮮明にした岸田文雄政権。原発が抱える問題は何ら変わっていません▼関西電力が福井県の原発の使用済み核燃料をフランスに運び出すという計画も、それを浮き彫りにしました。県外への搬出を求めていた福井県に対し、関電はこれまで、今年の年末までに使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外地点を示すと説明していました▼2021年には、それが示せない間は老朽原発を運転しない「不退転の覚悟で臨む」といっていたほどです。同県にある関電の原発は大量の使用済み核燃料を敷地内に保管し、貯蔵できる容量の8割以上に及んでいます。置き場所がなくなれば、炉心から核燃料を取り出せず、運転を停止しなければなりません▼もともとの運び出し先に予定していたのが、政府の核燃料サイクル政策の中核施設、青森県の六ケ所再処理工場です。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し核燃料として利用しようという、この政策はすでに破たんしています。トラブルなどで完成時期は26回も延期し、稼働すればプルトニウムを大量に抱えることになるのです▼今回、フランスに運び出す量は福井で抱える保管量のわずか5%。それを「中間貯蔵と同等」だという関電の言い訳が、通用するのか▼関電はこれからも再稼働を進め、使用済み核燃料はさらに増え、将来世代に大きな困難を押しつけることになります。原発推進が何をもたらすのか。声を上げ続ける必要があります。
(「しんぶん赤旗」2023年6月17日より転載)