新潟県が独自に原発の安全性を検証する「三つの検証」の取りまとめについて、検証総括委員会の元委員長の池内了(さとる)名古屋大学名誉教授や元委員の佐々木寛新潟国際情報大学教授らが県内各地で対話集会を重ねています。
3日に新潟市で開かれた対話集会で池内氏は、独自にまとめた「池内特別検証報告」案を発表、県民が参加する「市民検証委員会」を提案し、参加者の賛同で発足しました。
東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟県では、福島原発事故の事故原因、健康被害と避難生活への影響、避難方法の「三つの検証」を専門家による委員会で議論してきました。
今年3月までに各委員会の報告書が花角英世知事に提出されましたが、検証全体をまとめる検証総括委は、県側が議題や運営方法で池内委員長と意見の相違があるとして2年以上開催しませんでした。さらに今年3月末の任期で全委員を不再任とし、県職員で総括作業をすると発表しました。
これに対して前委員や県民から、「科学的な評価ができない」「積み上げてきた三つの検証が台無しになる」などの批判が出ています。
3日、池内氏は、「独立した検証総括をして県民に提示することは、前委員長の義務、科学者として任務を全うする責任」として、県の事務的総括では深めきれない、より踏み込んだ総括を提示したいと述べ、「池内検証」の要点を説明しました。各検証報告には両論併記のため事故原因や避難の実効性など重大問題の検証が不十分な点があること、検証から外れている東電や規制機関の適格性、風評被害や農水商工の回復などの地域問題、テロと戦争対策などの検証が必要などと訴えました。
池内氏は、各検証委員を務めた専門家に補完を依頼して報告書として近く刊行したいと話しました。また並行して対話集会を県内各地で開き、市民検証委員会の委員を広く募り、県民の意見を反映した市民検証総括書の作成をめざしたいと提案しました。
対話集会は約100人が参加。池内報告の後、数人のグループで感想や意見を出し合うワークショップ形式で交流し、活発に議論しました。
(「しんぶん赤旗」2023年6月8日より転載)