原発推進法が成立 安全神話復活 60年超運転も可・・事故教訓にも被害者にも背 参院本会議 岩渕氏が反対討論
原発事故の教訓を投げ捨て原発回帰に大転換する原発推進等5法(GX電源法)が31日の参院本会議で、自民、公明、維新、国民の各党などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党と立民は反対。日本共産党の岩渕友議員は反対討論で、原発事故被害者の思いも事故の教訓も踏みにじり、国民的な議論もないまま改定を強行することは「断じて許されない」と厳しく批判しました。
岩渕氏は、原発事故で避難を余儀なくされた被害者が「(ふるさとは)私にとって『生きている』と実感できる場所」との声を紹介。「原発事故はこの大切な場所を今も奪い続けていることを忘れてはならない」と強調しました。
原発推進等5法では、改定原子力基本法に原発の活用を「国の責務」と明記。運転期間の規定を、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法から削除し、推進側の経済産業省が所管する電気事業法に移し、60年超運転をも可能とします。
岩渕氏は、改定原子力基本法がエネルギーの安定供給と脱炭素を口実に「原発を最大限活用し、その利用を将来にわたり固定化、永続化するもの」と指摘。原子力産業の安定的な事業環境整備などを国の「基本的施策」とすることは「日本原子力産業協会など原発利益共同体の要求を丸のみしたものだ」と強調しました。
また、「原発事故の根源的な原因は規制当局が電気事業者のとりことなっていたことだ」と述べ、「本改定は原発事故の反省と教訓を踏みにじるものであり、新たな『規制のとりこ』、安全神話の復活ともいうべきものだ」と批判しました。
岩渕氏は、原発推進政策が省エネと再生可能エネルギーの大量導入を妨げていると指摘。国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、再エネに比べ原発はコストが高く、CO2排出削減効果が小さいことが示されているとし、一刻の猶予もない気候危機に「原発ゼロを決断し、再エネ最優先への転換を強く求める」と述べました。
国の責任投げ捨て 「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団長 中島孝さん
原発事故を受けて、いままで原発の依存度を低減するとしてきた、この間の政府方針を一気に投げ捨てました。投げ捨てただけでなくより危険な60年超運転を可能にし、さらに半永久的に原発を稼働させようという改悪の中身になっています。
老朽原発を動かすというのは、また過酷事故を引き起こす可能性を広げたということです。国民の命や暮らしを守るべき根本的な国の責任を投げ捨てたということに等しい。
原発を動かすと、再生可能エネルギーの拡大が阻害されます。再エネの拡大を止め、外国依存の核燃料を使うことは、戦争など海外の影響を受けやすい経済的な脆弱(ぜいじゃく)性によって、国民生活が脅かされます。
電力会社や株主の目先のもうけだけを考えた短絡的な決定で、許すわけにいかない中身です。
(「しんぶん赤旗」2023年6月1日より転載)