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原発回帰の大暴走政策「GX脱炭素電源法」の強行に抗議する・・市民団体が抗議・声明

原発回帰の大暴走政策「GX脱炭素電源法」の強行に抗議する・・「老朽原発うごかすな!実行委員会」、「日本科学者会議福井支部」が抗議・声明

 原発回帰に大転換する「GX脱炭素電源法案」=「束ね法案」が5月31日、参院本会議でも可決、成立しました。同法案は、福島第一原発事故の教訓から、新増設を想定せず既存原発の運転期間も40年に制限するという政府見解から後退させ、原発の活用を国の責務と明記し、60年を超える運転にも道を開くものです。また、CO2を出さない原発は地球温暖化対策に有利などの主張は、科学的に誤りです。さらに、同法案は「エネルギーの安定供給を表面に出しながら核エネルギーの軍事への転用を裏面に盛り込んだものであるとみられ、極めて危険」(日本科学者会議福井支部声明5月13日)という指摘もあります。

 岸田政権が「原発回帰」に当たって、エネルギー価格の高騰、電力需給ひっ迫、脱炭素などを理由にあげていますが、いずれも正当な理由にはなり得ません。私たち老朽原発うごかすな!実行委員会は、福島原発事故の教訓に真摯に向き合い、再生可能エネルギー・蓄電・省エネルギー社会への実現に、政策的・財政的に力を尽くしていれば、エネルギー危機を回避し、世界にエネルギー先進国として貢献できたとの主張を繰り返してきました。同政権の「脱炭素実現に原発不可決」というのは、まったくの筋違いです。

 私たち老朽原発うごかすな!実行委員会は、原子力エネルギーは人間に制御できる技術ではない、と大宣伝してきました。原発事故による災害は、放射性物質による環境破壊をもたらすものです。また私たちは、世界一の地震列島への原発立地は危険であり、フクシマを経験した日本で、このような原発推進法案が衆議院につづき、参議院でも可決、成立したことに強く抗議し、撤回を求めるとともに、成立しても実施させない運動を徹底して呼びかけ、力を尽くすものです。

 私たちは、裁判闘争にも力を入れています。岸田政権が「原発回帰」に大暴走した背景には、昨年6月、福島原発事故について「国の責任はない」とした最高裁判決と、昨年12月の老朽美浜3号機運転禁止仮処分の申立棄却(現在、大阪高裁に抗告)があると思います。最高裁は、「人災」である福島原発事故の経過についての司法判断を避けた上で、「天災」とすることで国の責任を免罪しました。また、大阪地裁は、「震源近傍敷地」問題では、総論で示した判断枠組みを無視し、「不合理であること」の立証責任を住民側に課すなどしたお粗末きわまりないものでした。これらの判決と決定は、福島原発事故と原子力災害に背を向けた極めて政治的な判決で、到底、受け入れられません。

 私たちは今後とも、①高コストで、人間の手に負えない原発からの撤退。②GX「束ね法案」の撤回と実施させない。③脱炭素というのなら世界の流れに従い、再生可能エネルギーの導入と省エネルギー社会への転換を進める。④国と東京電力に対して、被災者救済・被災地対策と事故収束対策に真摯に取りくむ。⑤老朽原発の運転に対する多くの住民の不安に応え、デモや集会など老朽原発の運転を阻止するため、たたかいを続けるものです。(文責:山本雅彦)


「岸田文雄内閣の原発回帰政策、およびG7広島サミット2023を、そのための政治宣伝の場に利用しようとする姿勢に抗議する」・・声明(略称:GX声明

抗議声明について発表する山本さん(左)=県庁で(中日新聞より転載)
(パソコン画面は笠原一浩弁護士=山本雅彦加筆)

 5月13日に開催された日本科学者会議(JSA)福井支部第53回定期大会で発出した「岸田文雄内閣の原発回帰政策、およびG7広島サミット2023を、そのための政治宣伝の場に利用しようとする姿勢に抗議する」・・声明(略称:GX声明)について、5月17日(水)午後1時、福井県庁記者室で、JSA福井支部が記者会見を行いました。

 記室参加は、山本富士夫代表幹事と山本雅彦事務局長の他に、Zoomでの参加は、高木秀男幹事、山根清志幹事、笠原一浩会員(弁護士)が参加しましたが、「声明」の第1起案者の小野 一会員は授業の都合で参加できませんでした。

 はじめに、山本代表幹事と山本事務局長が、記者に事前に配布済みの「声明」を説明しました。

 その後、笠原会員が、朝日新聞などが報じた翻訳改ざん問題を次のように説明しました。

 フクシマの放射性汚染水の海洋放出をめぐって、環境省のHPに公開している共同声明(G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ)の和訳では、「廃炉および福島の復興に不可欠である、多核種除去処理システム(ALPS)の処理水の放出」と書いてある。よって、この書き方だと、「処理水の放出が福島の復興に不可欠である」と読める。

 しかし、英文を正確に翻訳すると「廃炉および福島の復興に不可欠なのは、処理水の放出がIAEAの安全基準や、国際法に準拠して行われること、放出が人や環境に害を及ぼさないことは廃炉と福島復興に不可欠である」となる。よって、放出そのものが廃炉や復興に不可欠なものではない。

 このように、意図的捏造と思われる誤訳をしていると述べた上で、4月15・16日に札幌市で行われたG7気候・エネルギー・環境大臣会合終了後の記者会見で西村康稔経産大臣は「処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、そして、科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取り組みが歓迎される」と説明した。隣で聞いていたドイツのレムケ環境・原子力安全相は「原発事故後、東電や日本政府が努力してきたことには敬意を払う。しかし、処理水の放出を歓迎するということはできない」と批判したことを紹介。笠原弁護士は、政府がG7の共同声明をねじ曲げて訳したことを認めるべきで、住民団体から処理水の対応については重要な提案が出ているのでそれを含めて日本政府は対応を考え直すべきだと指摘しました。

 また、山本富士夫代表幹事からは、この声明に書かれた「経済産業省資料(2022年5月13日)に「エネルギー安全保障」の重要性が書かれているのは、「声明」の中で「たばね法案がエネルギーの安定供給を表面に出しながら核エネルギーの軍事への転用を裏面に盛り込んだものであるとみられ、極めて危険である。」という記述について説明しました。

「エネルギー安全保障」とは、日米軍事同盟にもとづく安全保障で、つまり、原発の核エネルギーを核兵器に転用するという解釈を含んでおり、これを「束ね法案」の中に隠しているというのが私たちの解釈で、弁護士会でも同様な解釈がいわれていると指摘し、原発と核兵器は表裏一体性があると強調しました。

 さらに、今年3月、広島サミットの部分を除く、同様の内容で福井県に申し入れたときのことを紹介しました。原子力安全対策課長に対し、このGX法案が成立した後に、福井県民の安全にとって福井県はどのように対応するのか、と尋ねました。同課長は、あわててしまい答えることができませんでした。このとき、私たちは、「この法案は、住民の安全を優先させるのではなく、規制委員会よりも電気事業法を優先し電気事業者を守ると基本法に書いてあり、原子力の推進・利用が第一にされているのではないか」と質問しましたが、同課長から回答はありませんでした。山本代表幹事が、「そんなことも答えられないのか。そんな程度か」とただすと「はい、その程度です」と開き直ったことを紹介しました。これでは県民の安全は守れないと指摘ました。


以下、「GX声明」の英文と和文

We protest against Kishida Fumio Cabinet’s return to pro-nuclear energy policy and its intention to use the G7 Hiroshima summit 2023 as an opportunity for propaganda
(Japan Scientists’ Association Fukui Branch)          May 13, 2023

Premier Fumio Kishida launched a plan to “maximally use” nuclear power plants (NPPs) and decided a bill of Green-transformation Act in the cabinet meeting on February 10, 2023. Here, the theory of green-transformation (GX) is inadequately mobilized to justify the retreat from nuclear energy policy principle after the Fukushima-Daiichi NPP accident in 2011: It has been a governmental policy not to build new NPPs and to limit NPP’s operation within 40 years. Parallel to this legislation process, the plenary session of the House of Representatives on April 27 passed the bill of “GX De-carbonated Power Resources Act.” This is a “packaged bill” which aims to amend energy-related five present laws altogether and will pave the way to over 60-years NPP-operation.
Such an assertion that CO2-free NPPs are advantageous for the purpose of global warming prevention is scientifically incorrect and therefore unacceptable. We the Japan Scientists’ Association (JSA) have critically commented about the recent tendency of “Nuclear Renaissance”, e.g. “An Urgent Statement of JSA International Department about the European Commission’s Proposal on January 1, 2022”, in which we explained that the European Commission’s proposal is a wrong direction which might pave the way for nuclear expansion and demanded the European Commission will not include nuclear power generation into the European Union’s “green list” (EU taxonomy for sustainable activities). At the same time, we never neglect the fact that a myth of CO2-free NPPs is prevailing among people, even in a part of environmental movements. Looking back on the fact that the Ministry of Economy, Trade and Industry’s document on May 13, 2022, described the importance of energy security, it is supposed that the today’s bill of GX De-carbonated Power Resources Act stresses the stable energy supply on the one hand but conceals on the other hand the possibility of military conversion of nuclear energy in the future. We regard it as a very dangerous intention.
Probably, Japanese administration under Premier Kishida will use the G7 Hiroshima summit 2023 as an opportunity to share its nuclear expansion policy on the pretext of green-transformation (GX) with the political leaders of the G7 countries. The JSA Fukui Branch protests against such a false intention and aims to promote collaboration between anti-nuclear movements and environmental movements which tackle with climate change prevention mainly. We think:

(1) Kishida Cabinet should refrain from using the G7 Hiroshima summit 2023 as a justification of its return to pro-nuclear energy policy on the pretext of green-transformation (GX).

(2) Kishida Cabinet should refrain from using the G7 Hiroshima summit 2023 as a support for accelerating ocean release of radioactive contaminated water of Fukushima-Daiichi NPP.

(3) Kishida Cabinet should refrain from regarding the Nuclear Renaissance in recent years as a solution for global warming prevention. It is important that Germany, one of the G7 countries, has successfully phased out from nuclear energy parallel to its fight against climate change.

(4) The G7 countries must devote to preventing the crises of nuclear war and nuclear disaster in connection with the Russian invasion of Ukraine.

The JSA is a scientists’ community in a country which has experienced not only miseries of atomic bombs in Hiroshima and Nagasaki but also severe nuclear accident in Fukushima. Further, the JSA Fukui Branch is a civil organization engaging with the realities of communities where many NPPs are located. We publish a statement/message for ecological justice at the very moment when the worldwide public concerns are concentrated in Hiroshima.

岸田文雄内閣の原発回帰政策、およびG7広島サミット2023を、
そのための政治宣伝の場に利用しようとする姿勢に抗議する

        2023年5月13日
日本科学者会議福井支部

 岸田文雄首相は、「原発の最大限利用」方針を打ち出し、2023年2月10日に「GX推進法案(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」 を閣議決定した。そこでは、グリーントランスフォーメーション(GX)の理念を不適切に援用することで、原発の新増設を想定せず既存原発の運転期間も40年に制限するなどといった福島第一原発事故(2011年)以来の政府見解からの後退を正当化する論理構成がとられている。それと並行するかたちで、4月27日の衆議院本会議は、「GX脱炭素電源法案」を可決した。同法案は、5つのエネルギー関連現行法(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再生可能エネルギー特措法)をまとめて改正する「たばね法案」で、原発の60年を超える運転にも道を開く。
 CO2を出さない原発は地球温暖化対策上有利といった類いの主張は、科学的に誤りであり、容認しがたい。私たち日本科学者会議(JSA)は、近年のいわゆる「原子力ルネサンス」とでもいうべき動向に対し、批判的立場をとってきた。例えば、「2022年1月1日付けの欧州委員会提案についてのJSA国際部緊急声明」などがそうであり、その中で私たちは、この欧州委員会提案が原発拡張に道を開きかねない誤った方向性であることを説明し、欧州委員会が原子力発電を欧州連合の「グリーンリスト」(EUタクソノミー)に加えないことを求めた。他方では、私たちは、CO2を出さない原発という「神話」が、一部の環境保護運動も含め人々の間に広がりつつあるという事実も軽視しない。また、経済産業省資料(2022年5月13日)に「エネルギー安全保障」の重要性が書かれているのは、「たばね法案」がエネルギーの安定供給を表面に出しながら核エネルギーの軍事への転用を裏面に盛り込んだものであるとみられ、極めて危険である。
 おそらく、岸田首相統治下の日本政府は、G7広島サミット2023を、グリーントランスフォーメーション(GX)を口実に原発回帰を図る自らの政策に対するG7諸国首脳の「お墨付き」を得るための場として利用しようとするだろう。JSA(日本科学者会議)福井支部は、そのような目論見に抗議するとともに、気候変動防止対策を中心に活動する環境保護運動と反原発運動の協働促進を目指す。私たちの見解は、以下のとおりである。

① 岸田内閣は、グリーントランスフォーメーション(GX)を口実に原発回帰を図る自らの政策の正当化のためにG7広島サミット2023の場を政治的に利用すべきでない。

② 岸田内閣は、福島第一原発放射性汚染処理水の海洋放出にお墨付きを得るためにG7広島サミット2023の場を政治的に利用すべきでない。

③ 岸田内閣は、いわゆる原子力ルネサンスという近年の動向を、地球温暖化防止対策を進めるための方策とみなすべきでない。G7構成国のひとつであるドイツが、気候変動防止対策をとるのと並行して脱原発にも成功したことは、重要である。

④ G7構成国は、ロシアによるウクライナ侵攻との関連において、核戦争の危機および原子力災害を防止する方策を講じなければならない。

 JSAは、ヒロシマ・ナガサキにおける原爆投下と、フクシマの原発事故の悲惨さを経験した国における科学者コミュニティである。また、JSA福井支部は、数多くの原発が立地する地域社会の現実の中で活動する市民団体としての性格も有する。私たちは、世界の人々の関心が広島の地に集中する今、エコロジー正義を願い声明/メッセージを発出する。(第1起草者:小野一・JSA福井支部幹事)