東京電力は3月30日、炉心溶融を起こした福島第1原発1号機の原子炉格納容器の内部調査の速報結果を発表しました。原子炉圧力容器を支えている円筒形の土台(ペデスタル)の内壁部分の損傷が、全周の少なくとも半分以上の広範囲に及んでいることを明らかにしました。
東電は28日から、初めて圧力容器の直下に水中ロボットを遠隔操作で投入。29日までに土台の内壁側をほぼ半周して撮影しました。その映像から、土台の大半でコンクリートが失われて鉄筋がむき出しになっている状況が確認されたほか、原子炉直下に計測装置が形状を維持した状態で残っている状況や、棒状の構造物が堆積物に刺さっている状況なども判明しました。
直径約5メートル、重量約440トンの圧力容器を下から支えるペデスタルは円筒形の構造で、本来は厚さ1・2メートルのコンクリートの壁でできています。コンクリートが失われた状態のペデスタルが、地震など何らかの原因で大きく壊れることも懸念されます。東電は耐震性について、検討を進めるとしています。
解説
全容遠く デブリ取り出し見通せず
事故発生から12年。福島第1原発1号機で、水中ロボットを使った調査によって、原子炉直下の深刻な状況が明らかになってきました。状況がまったく分からなかった状況からは一歩前進ですが、全容の把握にはほど遠く、溶け落ちた核燃料の取り出しなど課題は山積しています。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは30日の記者会見で、今回の調査で得られた映像について「ちゃんと見えたという印象をもっている。燃料デブリの取り出し、さらには事故の進展がどうだったかというところに情報が使えるので、しっかり分析したい。大きな前進だと思っている」と述べました。
1号機は、大量の核燃料が溶けて原子炉圧力容器の底を突き抜け、原子炉格納容器の底に落ちたとみられています。格納容器の底には、高温の核燃料や燃料被覆管、炉心構造物が溶けて混ざって冷え固まった「核燃料デブリ」が232~357トンあると推定されています。
今回、原子炉を支える土台(ペデスタル)の内側、原子炉直下でがれき状やかたまり状の堆積物が確認されましたが、どのように分布しているのかはまだ分かっていません。ペデスタルの外側の状況も含めた堆積物の全容の把握は、取り出す工法を決める前提です。
核燃料デブリは、1~3号機合わせた総量が600~1100トン規模と推定されていますが、取り出しに向けた具体的な道筋は描けていません。最も取り組みが進んでいる2号機でさえ、2023年度後半に数グラム程度の試験的な取り出しをめざしているという現状。1、3号機はそうした見通しもありません。
政府・東電は、51年までに廃炉を完了するとしていますが、本当にできるのか。今回の調査でも、原発事故の深刻さが改めて浮き彫りになりました。
(「原発」取材班)
(「しんぶん赤旗」2023年4月1日より転載)