東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(82)と原子力部門トップを務めた武黒一郎(76)、武藤栄(72)=いずれも元副社長の3被告の判決が1月18日、東京高裁(細田啓介裁判長)でありました。細田裁判長は、「(原発の)敷地を超える津波の襲来を予見できなかった」と3人を無罪とした一審判決を支持し、指定弁護士の控訴を棄却しました。
検察官役の指定弁護士は会見で、「到底容認できない」と述べ、上告については改めて検討するとしました。
公判には、武藤被告と武黒被告が出廷。旧経営陣3人は、津波対策を怠り、原発事故で付近の病院の入院患者ら44人を死亡させたなどとして2016年に強制起訴されました。
裁判で焦点となった国の機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」の信頼性について、一審東京地裁は19年9月、「合理的な疑いが残る」などとしていました。
細田裁判長は、福島第1原発の原子炉建屋などの敷地の高さを超えるような津波の襲来について長期評価が「現実的な可能性があると認識させるような性質をそなえた情報」ではなかったと判断。その上で、運転停止をすべき義務に応じる事情が存在したという点でも「証明は不十分」としました。
これに対し指定弁護士は、長期評価について昨年6月にあった集団訴訟の最高裁判決でも一定の評価をしているのに、高裁判決がその信頼性を全面的に否定したと述べ、「国の原子力行政に呼応し、長期評価の意義を軽視するものだ」と批判しました。
(「しんぶん赤旗」2023年1月19日より転載)