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主張 「原発回帰」と対決・・ゼロをめざして共同の発展を

 政府は昨年末、岸田文雄首相の号令一下、「原発回帰」に大転換する原発推進の基本方針を決めました。「可能な限り原発依存度を低減する」としてきた政府自らの立場を投げ捨てる暴挙です。

 東京電力福島第1原発事故の被災者は「事故が起きたら誰の手にも負えない。その教訓がどこへ行ったのか」と怒りの声を上げています。岸田政権の「原発回帰」は、「原発事故前の日本に戻してはいけない」(伊東達也・いわき市民訴訟原告団長)という被災地の願いを踏みにじり、日本の進路を誤らせるものです。

日本社会と共存できない

 福島原発事故では16万人以上が避難を余儀なくされ、いまなお多くの人が苦しんでいます。暮らしだけでなく、その土台である地域の産業と文化が深刻な被害を受けました。放射性物質で強く汚染された地域では、現在も帰還は見通せないままです。このような危険をはらむ原発は、日本の社会とも国民とも共存はできません。

 原発の再稼働加速と運転期間延長、新たな原発建設は、大手電力会社と原発業界の強い要求でした。政府は、ロシアのウクライナ侵略の影響によるエネルギー情勢や「脱炭素」を口実にしていますが、いずれも危うい道と言わなければなりません。

 再稼働を加速しようにも、原発が立地する各地で避難計画づくりや地元同意のめどが立っていません。日本原子力発電東海第2原発(茨城県)は水戸市を含む94万人が避難対象ですが、計画策定は困難を極めています。東電柏崎刈羽原発(新潟県)でも記録的な大雪によって避難不可能であることが証明されました。そもそも重大事故が起これば、たとえ避難できたとしても故郷を失いかねません。この現実こそ直視すべきです。

 運転期間延長は、原子力規制委員会の審査などで停止していた期間を上乗せして、60年超の運転に道を開こうというものです。しかし止まっていても機械設備は劣化します。世界でも60年を超えて運転した原発はなく、「未知の領域」(山中伸介原子力規制委員会委員長)であり、前例のない危険なやり方に他なりません。

 新たな原発の建設費は1兆円とも言われます。フランスで建設中の新型炉も完成は遅れに遅れ、費用が莫大(ばくだい)に膨れ上がり問題になっています。原発を動かせば動かすほど、使用済み核燃料など処理困難な核のゴミが増えます。将来世代に負の遺産を押し付ける無責任さも浮き彫りになっています。

 直面する気候危機打開は、2030年までの取り組みが極めて重要です。持続可能な社会のためにも、省エネルギーと再生可能エネルギーの推進こそ求められています。その障害となっているのが原発です。供給力調整の際、原発の運転を維持し、太陽光発電などを抑えているのは、その典型です。

道理ない逆戻りを許さず

 岸田政権は、原発をめぐる基本方針を2月にも閣議決定しようとしています。「原発回帰」は、社会的にも経済的にも道理がありません。新たな「安全神話」をつくり、国民を危険にさらすことを断じて許してはなりません。

 新たな年を、逆流を押し返し「原発ゼロの日本」「持続可能な社会」への転換をめざし、国民的共同を発展させる年にしましょう。

(「しんぶん赤旗」2023年1月6日より転載)