東京電力福島第1原発事故後の福島や新型コロナウイルス感染症流行後の日本で、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病と精神疾患が増えたことが、大阪大学などの研究チームの解析で分かりました。災害や感染症流行後に、こうした二次的な健康影響を考慮する必要性が浮き彫りになりました。
研究チームは、健康保険組合の加入者のレセプト(診療報酬明細書)について、2009年1月~20年12月のデータを解析しました。対象は、おもに大企業の従業員と家族で、74歳以下です。
解析の結果、原発災害の発生後9年間にわたって高血圧症、脂質異常症、糖尿病の有病率が、福島県全域で増加。精神疾患が、原発のある浜通り地域(同県沿岸部)で増加していたことが分かりました。隣県の岩手・宮城では変化はみられませんでした。
一方、コロナ禍後はこれらの疾病の有病率が日本全体で増加していました。ただ、原発災害の被災地ではコロナ禍による変化は小さかったといいます。
原発災害では40~74歳の女性で、コロナ禍では0~39歳の男性で、疾病の増加が顕著でした。研究チームは、影響が大きい性別・年齢層の違いに注目。災害などの特性に応じた健康支援が重要だと指摘しています。
研究成果は、オランダの科学誌『インターナショナル・ジャーナル・オブ・ディザスター・リスク・リダクション』(11月29日)に掲載されました。
(「しんぶん赤旗」2022年12月31日より転載)