東京電力の石崎芳行副社長(福島復興本社代表)は10月29日の記者会見で、福島第1原発5、6号機を廃炉にした場合の対応に関連し、放射性物質を含む雨水の一時的な貯蔵施設として、タービン建屋の地下の利用を検討していることを明らかにしました。
東電は事故被害が大きかった1~4号機の廃炉を決定していますが、安倍晋三首相は9月、東電に5、6号機も廃炉にするよう要請。東電は、年内に廃炉にするかどうか結論を出す方針です。
福島第1原発では、9月以降に相次いだ台風や大雨で、汚染水貯蔵タンクを囲うせき内に放射性物質を含んだ雨水がたまり、あふれ出すなどのトラブルが相次ぎました。東電は、せき内の水をくみ上げ、高濃度汚染水がたまっている2、3号機タービン建屋の地下に移送し、一時的に保管していますが、これらの地下の水位が上昇。汚染された雨水の保管場所の確保が課題になっています。
排水溝下流で放射能が上昇・・福島第1
東京電力は10月29日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の排水溝下流で28日に採取した水から1リットル当たり1400ベクレルの全ベータ(ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質)を検出し、前日から上昇したと発表しました。
水を採取したのは外洋への出口まで150メートルの地点(C‐2)。27日採取分では同1100ベクレルでした。
また、これより上流の地点(B‐3)でも同2万1000ベクレルを検出。前日の同4800ベクレルより上昇しました。
原子力規制庁によると、B‐3の下流では土のうを積んで汚染水をくみ出す対策がとられていますが、C‐2から海までは何も対策がとられていません。法令による放出基準を大きく超えている疑いが濃厚な汚染水が、そのまま海へ流れている状況です。
地下貯水槽にせきの水3700トン
東京電力福島第1原発の汚染水タンク群を囲むせきから放射性物質を含む水があふれた問題で、東電は10月28日、台風27号の接近に伴う先週末の雨でせきにたまった水のうち、計1600トンを地下貯水槽2基に緊急移送したと発表しました。大雨に備えてせきを空にするため事前に移した分を含めると、2基に計3700トンがたまっているといいます。
東電によると、タンク群24力所のうち、せき内の水の放射性物質濃度が東電の暫定排出基準を超えた9カ所について、地下貯水槽に移送しました。貯水槽の水は今後、2、3号機タービン建屋などに移すといいます。
地下貯水槽は7基ありますが、今回使っていない3基で汚染水漏れが発覚し、全基の使用を中止していました。台風接近でせきの水の移送先確保が難航し、原子力規制委員会は一時的な措置として利用を容認しました。
漏出地下貯水槽・・浮き上がり発見
東京電力は10月28日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で、放射能汚染水の漏えいが4月に見つかった地下貯水槽で浮き上がりが発見されたと発表しました。
東電によると、1号貯水槽の中央部を中心に12センチメートル程度の浮き上がりが見つかりました。東電は、周辺の地下水位が上昇して浮力が働いたことが原因とみています。
地下貯水槽は七つあり、4月に1~3号貯水槽で汚染水漏れが発生しました。その後、中の水を地上タンクに移し、使用しないと決定。8月に3、4号貯水槽で最大40センチの浮き上がりが見つかり、今月21日に5、6号貯水槽でも浮き上がりが見つかりました。
しかし東電は、この間の台風や大雨で、タンク周りの堰(せき)内にたまった汚染水を貯蔵する場所が足りないとして、4、7号貯水槽に水の移送をしています。