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岸田首相の原発推進表明 批判と怒り

 脱炭素化を促進するためとして設置された「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で岸田文雄首相が、電力需給ひっ迫などを理由に新設を含む原発推進方針を表明。多くの批判の声が上がっています。

“福島は忘れろ”か

いわき市民訴訟原告団長、原発問題住民運動全国連絡センター代表委員 伊東達也さん

 政府の方針は、完全に3・11前に戻ったようです。東京電力福島第1原発事故の問題はもう終わった、国民にも福島の現状は忘れてもらおうということなのでしょう。

 しかし、原発の過酷事故はもう起こらないと言えるのでしょうか? そんなことは全く言えません。再び福島第1原発事故のようなことが起きれば、日本は本当に存亡の危機に陥ります。

 また、事故発生から11年以上たっていますが、いまだに8万人以上の人々が故郷に帰れていない、事故の損害賠償を求める被害者訴訟で今も新たな原告が増えているのが現状です。福島第1の3基の原子炉格納容器内にある溶融燃料やその他の大量の放射性廃棄物をどこにもっていくのか何も決まっていません。もちろん、福島原発だけでなく全国の原発の使用済み核燃料などの処分も全く見通せません。

 気候変動対策や電力需給ひっ迫を理由としていますが、原発推進は問題を増やすだけです。問題を将来世代に押し付ける、あしき行為を繰り返すことになります。

 政府は原発推進のためにも、福島のことは過去のことだとするでしょう。福島原発事故をどう収束させ、福島を復興するのか関心が薄れていくことを懸念します。それを許さないために、福島の現状を訴えていきたい。

再エネ転換先送り

国際環境NGOの350・org Japanコミュニケーションズ・コーディネーター 伊与田昌慶さん

 パリ協定の1・5度目標のために必要な「脱化石燃料」を進めないまま、原子力という誤った解決策を推進する政府方針には大きな問題があります。

 特に、次世代の原子炉の建設に舵(かじ)を切ったと注目されていますが、次世代炉はいつまでに開発・普及できるか、見通しがありません。この不確実な技術で、いつまでにどれくらいの二酸化炭素が削減できるか、不明です。

 2021年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議で、気候変動対策としてこの10年が決定的に重要であり、脱石炭火力発電を進めること、排出削減を一層強化する必要があると合意されました。世界がめざす脱石炭や、技術確立済みで安価な再エネ普及ではなく、30年に普及が間に合う見通しがない次世代原子炉を推進するのは、気候変動対策のためではなく、むしろ既存の原発・化石燃料関連産業を守るためではないかと疑われます。

 気候変動対策としては、何よりも省エネが大事です。徹底的に省エネをした上で、必要なエネルギー需要を再エネ100%で賄うことをめざすべきです。次世代原子炉のような革新的技術は、今必要な対策から人々の目をそらし、脱化石燃料や再エネ転換を先送りすることにつながります。

 東京電力福島第1原発事故の被害者の救済も不十分です。事故リスクの懸念もあり、核のごみも未解決です。国会も国民的議論もせず、参院選の自民党公約になかった新設を含む原発推進方針が打ち出されたのは民主主義の軽視に他なりません。

■岸田首相が打ち出した原発推進方針

 ○再稼働済み10基に加え新たな再稼働

 ○運転期間のさらなる延長

 ○次世代型原発の開発・建設

(「しんぶん赤旗」2022年8月31日より転載)