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再稼働7基追加指示は暴挙・・危機克服 脱原発こそ

 岸田文雄首相が24日、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、これまで再稼働した10基の原発に加え新たに7基を再稼働し、原則40年とされる運転期間の延長と次世代型原発の開発・建設を検討するよう指示したことは、福島第1原発事故以降、原発の新増設と建て替え(リプレース)を「想定していない」としてきた従来の方針を大転換する暴挙です。

 地元同意を無視し、今なお収束せず甚大な被害をもたらしている福島原発事故などなかったかのような無責任な態度は許せません。

安全の保証なし

 首相は「安全性の確保を大前提」として「運転期間の延長」を表明しました。

 そもそも、国内の原発寿命は平均30年を超えて老朽化しています。設計も古く、事故に至らない場合でもトラブルは頻繁に起きています。

 実際、関西電力では2020年に配管や機器の損傷が見つかるなどで、再稼働済みの4基の原発すべてを2カ月余り停止させており、「安全性の確保」は言葉だけで何の保証もありません。

 また、運転期間の延長は、国会審議を経た法令改定が必要で、首相の一存では決められません。しかも同会議は、国会などの国民的議論を経ることなく非公開で行われており、福島事故の教訓である「透明性の確保」に背を向けた、国会軽視そのものです。

 同会議の資料には、ウクライナ侵略に起因するエネルギー危機に対応する「危機克服」のために原発を進めると記しています。しかし原発は、ひとたび事故が起これば取り返しのつかない被害をもたらすリスクがあるほか、紛争や災害に弱く、放射性廃棄物の処理など未解決な課題が山積しており、危機は深まるばかりです。

企業の利益擁護

 同会議のメンバーには経団連や電力会社会長など複数の原発利益関係者が占め、経産省の資料(『今後の原子力政策について』)では、日立GEや東芝、三菱重工など、原子力産業の企業名を列挙し「約1000万個の部品点数を供給するサプライチェーン(供給網)」の「劣化が懸念される」と強調しています。

 結局、「原子力ムラ」の利益擁護だということが透けて見えます。

 一方、原発をやめ省エネ・再エネ投資を進めれば、30年までに毎年約254万人の雇用が生み出され、国内総生産(GDP)は累積で205兆円増加するとの試算があります。

 脱原発、省エネと再エネの推進こそ「危機克服」の唯一の道です。(土屋知紀)

(「しんぶん赤旗」2022年8月26日より転載)