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主張 原発新増設の検討・・国民に一層の危険 許されない

 岸田文雄首相が8月24日、エネルギー政策を検討する政府の会議で、次世代型原発の開発・建設を検討する方針を表明しました。政府はこれまで既設原発の再稼働を推進する一方、新増設・リプレース(建て替え)は「想定していない」としてきました。新たな方針は、将来にわたり原発に依存し続ける姿勢を露骨に打ち出したものです。原発が一たび事故を起こせば、住民に甚大な被害を与えることは11年前の東京電力福島第1原発の事故で明らかです。大事故の教訓を忘れ、新たな「安全神話」をつくりだす原発回帰の逆流を許してはなりません。

再稼働推進「国が前面」

 岸田政権は昨年決定したエネルギー基本計画で、原発は「ベースロード電源」で「必要な規模を持続的に活用」するとし、2030年度の原発の電源構成比率を20~22%にすると決めました。ただ、世論の批判を意識して、新増設の明記を見送り、「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」とも記述しました。今回、この立場を完全に投げ捨てたことは重大です。

 さらに首相は「既設原発の最大限の活用」を図るため、すでに再稼働したことのある10基に加え、23年夏以降、新たに7基を順次再稼働させることも強調しました。「国が前面に立ってあらゆる対応をとる」と明言し、前のめり姿勢を鮮明にしました。7基は原子力規制委員会の審査で「合格」とされながら、動いていない原発です。地元自治体の同意が得られていない東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)や日本原子力発電東海第2原発(茨城県)も対象です。

 柏崎刈羽原発は昨年、侵入者を検知する設備の故障などの問題が判明し、規制委が事実上の運転禁止命令を出しています。福島第1原発事故への反省もなく、不祥事が後を絶たない東電に対して原発に携わる資格そのものを問う声が上がっています。東海第2原発は、30キロ圏内に国内の原発では最多の約94万人が暮らしており、避難計画づくりは困難を極めています。昨年3月、水戸地裁は、実現可能な避難計画が整えられていないとして同原発の運転差し止めを命じる判決を言い渡しました。

 他の4基についても、周辺住民の反対の声が相次いでいます。民意もリスクも無視して再稼働を推し進めることは、あまりに乱暴です。新方針で最長60年としてきた運転期間の延長を検討するとした、老朽原発の延命策も安全の置き去りです。

 東京地裁は7月、東電旧経営陣に13兆円超の賠償を命じた判決で、原発事故が起これば「国土の広範な地域や国民全体にも甚大な被害を及ぼし、地域の社会的・経済的コミュニティーの崩壊や喪失を生じ、ひいてはわが国そのものの崩壊につながりかねない」と指摘しました。首相はこの警告を受け止め、新方針を撤回すべきです。

省エネ・再エネを本気で

 首相は電力・エネルギーの安定供給や脱炭素を原発活用の理由に挙げます。しかし、これらの課題は、省エネルギーと再生可能エネルギー拡大を真剣に追求してこそ打開の道が開けます。日本にある再エネの力を最大限活用する時です。これまでも原発頼みの政府の政策が再エネの普及を妨げてきました。原発依存との決別こそが不可欠です。

(「しんぶん赤旗」2022年8月26日より転載)