東京電力は8月3日、福島第1原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後の高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)を薄めて海に放出するのに必要な海底トンネルなどの本体工事について、準備が整えば4日に着工すると発表しました。これまで2023年春ごろとしていた設備の完成時期は、気象条件によって夏ごろにずれ込む可能性があるとしました。台風などの気象条件が海底トンネル関連の工事に影響するためだとしています。
計画は、敷地内のタンクにためているアルプス処理水に含まれるトリチウム濃度を国の基準の40分の1未満になるように海水で薄め、新しく設置する海底トンネルを通じて沖合約1キロで放出するというもの。2日には、福島県と第1原発が立地する大熊、双葉の両町が東電の設備計画を了承しました。これを受けて東電は3日、着工するアルプス処理水の海洋放出設備などについて説明しました。
政府と東電は昨年4月の基本方針で、「2年程度後に」海洋放出するとしています。
海洋放出をめぐっては、国民の中に多くの懸念や反対の声があります。政府と東電は15年、海洋放出に反対する地元漁業者に対して「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と約束。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は「全国の漁業者・国民の理解を得られないアルプス処理水の海洋放出に断固反対であることはいささかも変わるものではない」としています。
政府や東電は「説明を尽くしていく」と繰り返しますが、漁業者との約束をないがしろにし、国民的な議論を置き去りにしたまま準備を進める姿勢に批判が高まっています。
(「しんぶん赤旗」2022年8月4日より転載)