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原発9基稼働方針・・安全性を無視し、再エネ推進に逆行

 岸田文雄首相が14日の会見で表明した最大9基の原子力発電を稼働させる方針は、安全性を無視し、再生可能エネルギーと省エネルギーの推進に逆行する危険な道です。

電力不足に便乗

 岸田首相は会見で、国の内外に「有事と言っていいほどの大きな歴史を画する課題が山積している」との認識を示し、原発再稼働が円滑に進むよう国が前面に立ち、立地自治体など関係者の理解と協力を得ると言及。「日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保する」などと述べました。

 「有事」を強調して電力不足といわれる事態に便乗し、今なお収束せず甚大な被害をもたらしている東京電力福島第1原発事故などなかったかのような無責任な姿勢です。事故原因の究明や安全対策も不十分な中、再稼働など許せません。

 国内では現在、関西電力大飯原発3号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、九州電力玄海原発4号機(佐賀県)、同電力川内原発(鹿児島県)の2基の計5基が稼働しています。このうち玄海原発4号機は、テロ対策施設の工事のため稼働できなくなる見通しの一方で、定期点検などで稼働していない原発5基が冬には再稼働できる見込みだといいます。

日本の資源豊富

 岸田首相は、日本は「資源が乏しく、安価で安定的、脱炭素に対応するため」に原子力を進めるといいます。しかし、2020年度の日本の発電電力の総量は約1兆キロワット時です。一方、太陽光や風力など再エネの潜在能力は約7兆5000億キロワット時(環境省、再エネ導入ポテンシャル調査)で、現在の電力使用量の7倍以上です。日本は、豊富な再エネ資源に恵まれており「資源が乏しい」とはいえません。

 また、原発は「安価」といいますが、福島第1原発事故の事故処理費用は少なくとも11兆円にのぼり、今後どこまで膨らむか見当もつきません。再稼働のための追加安全対策費も電力会社11社で5兆4千億円を超えているといわれます。発電コストは太陽光の4倍で、もはやビジネスとして成り立ちません。

 さらに、原発が「安定的」だといいますが、関西電力高浜原発3号機では、3月1日に開始した定期検査中に配管破損が見つかりました。長期運転を続けてきたことが原因の一つです。国内の原発の運転年数は平均で30年を超えており、同様の破損が発生し、原発が停止する可能性は今後ますます高まります。古い設備や技術への依存は事故の不安が大きく、核のゴミの処分については、首相は一言もふれていません。

 原発を「脱炭素」だというのも欺瞞(ぎまん)です。原発は脱炭素の切り札である再エネ導入の足かせになっています。

 実際、国は原発を主力電源と位置づけてきたため、九州電力管内では再エネ発電量が過剰になると、太陽光や風力で発電された電力を送電網への接続から外す出力抑制が行われ、18年以降だけでも250回も実施されました。今年に入ると、四国電力、東北電力、中国電力、北海道電力管内でも行われてきました。

 原発依存をやめ、再エネと省エネの推進こそ進むべき道です。

 (土屋知紀)

(「しんぶん赤旗」2022年7月16日より転載)