東京電力福島第1原発事故をめぐり津波対策を怠ったとして、東電の株主38人が、旧経営陣5人に東電に対し22兆円を支払うよう求めた訴訟の判決が13日、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)であります。
同訴訟は、福島第1原発事故で巨額な損失を出したのは東電の歴代経営陣が津波対策を怠ったためだとして2012年3月、取締役ら27人を被告として東電にもたらした約5兆5000億円の損害賠償を求めて起こされました。その後、廃炉費用や被害者への賠償などの推計が大幅に増大したため賠償額を22兆円に増額。また裁判進行のため被告を5人に絞りました。
5人の被告は、同事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴され一審で無罪となった勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人に、清水正孝元社長、小森明生元常務です。東電への賠償を求めているこの裁判で、東電は被告人らの補助参加人となっています。
主な争点は、敷地の高さを超える津波の到来を予見できたか、対策をとれば事故は防げたかで、福島第1原発事故をめぐる損害賠償訴訟や刑事裁判と多くの点で共通しています。
原告側は、被告らが国の地震調査研究推進本部が02年に公表した地震予測「長期評価」などに基づいて敷地を超える津波を予測できたと主張。また、被告らが津波対策を決断さえすれば、対策工事を行うことで、事故は回避できたと指摘しています。
一方、被告らはいずれも長期評価には十分な予見性がなく、土木学会に長期評価について検討を依頼し、対策を直ちに取らなかった被告らの判断は合理的で、管理者として注意義務違反はなかったと主張しています。
裁判では、政府や国会の事故調査報告書やその資料、旧経営陣3人に対する刑事訴訟で明らかになった証拠、地震や原子炉の専門家の証言が得られています。また、この裁判では昨年10月、朝倉佳秀裁判長らが、原告側が長年要望してきた福島第1原発の視察をおこないました。
(「しんぶん赤旗」2022年7月12日より転載)