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原発頼みをやめて再エネ・省エネ推進を・・電力不足招いた自公政権の責任重大

 「電力需給の逼迫(ひっぱく)」が叫ばれるなか、自民、公明、維新、国民民主の各党は、ここぞとばかりに原発再稼働を求めています。原発頼みで再生可能エネルギーと省エネルギーの推進を怠り、電力不足を招いた自公政権の責任は重大です。

 岸田文雄首相は会見で、原発再稼働の審査を迅速化し「最大限原子力を活用していく」と発言(6月28日)。日本維新の会の馬場伸幸共同代表は広島市内での街頭演説で「節電などでこの夏を乗り切れるはずがない」「12基の原発を今すぐ動かすべきだ」とまで述べています。(同30日)

 今なお甚大な被害をもたらしている東京電力福島第1原発の事故がなかったかのような無責任さです。

 東電管内では6月末の4日間、「電力需給逼迫注意報」が出され、節電が呼びかけられました。

東京電力の中央給電指令所。発電所の発電量などにより、電力系統の安定をはかっています=2015年3月

再エネ後回し

 根本的な背景には、原発と石炭火力を「主力電源」と位置付け、再エネを後回しにしてきた問題があります。

 2020年の日本の総発電量に占める再エネの割合は22%にすぎませんが、ドイツでは48%、イギリスは43%、アメリカのカリフォルニア州は53%(19年)にのぼります。また、過去10年間の総発電量に占める太陽光と風力の割合も、日本は低いレベルで推移しています(グラフ参照)。さらに、30年に向けた目標も、日本の36~38%に対し、ドイツは65%、カリフォルニア州は60%で、日本は世界から大きく立ち遅れています。

 ところが岸田首相は、6月21日の党首討論でも「安定して安価なエネルギーを確保しなければいけない」などと述べ原発を主力電源とする姿勢を示しました。

 そのため、再エネ発電量が過剰になると、太陽光や風力で発電された電力を送電網への接続から外す出力制御が行われています。18~21年では九州電力管内だけで250回も実施。今年に入り四国電力、東北電力、中国電力、北海道電力管内でも行われました。

 しかも、太陽光と風力発電の導入コストは原発よりも安価となっており、コストを理由にした再エネ軽視の主張は成り立ちません。

 さらに、世界的な資源価格高騰とアベノミクスによる円安で電力価格が上昇するなか、再エネ導入の遅れは家計を圧迫しています。

 100%国産の再エネの大規模な普及こそ、エネルギー安定供給の切り札です。

産業で不可欠

 日本も参加する再エネの国際機関「IRENA」(アイリーナ)が3年前に発表した報告「新たな世界」は、「化石燃料輸入国は、石油・ガス輸出国で発生しうる政情不安やテロ攻撃、武力衝突によるエネルギー供給停止や、価格変動といったリスクに対し脆弱(ぜいじゃく)だ」と警告していました。

 ロシアによるウクライナ侵略は、化石燃料に依存する国の弱点を浮き彫りにしています。

 国内の電力消費量の約70%を産業部門と業務部門が占めます。一方、家庭部門は約30%(「エネルギー白書2022」)。電力需給の厳しい局面では、節電や電力の大口需要者への需要調整、蓄電システムでの対応とともに、産業部門の大幅な省エネや建物の断熱化、電力利用の効率化が不可欠です。

再エネ優先利用政策こそ

元日本環境学会会長 和田武さん(再生可能エネルギー論)

 東京電力エリアで電力不足が問題になっていますが、一方、九州では太陽光発電の出力抑制が頻発しています。全国の再エネ電気が、どこでも使えるようにすれば、電力不足は起きにくいのです。各地域間の送電線を抜本的に強化し、他国のように送電会社を1~2社にすればよいのです。

 気候危機は待ったなしですから、火力発電から脱却し、再エネを飛躍的に増やす政策が必要です。原発は、巨大地震が多い日本では過酷事故の危険性があり、全廃すべきです。

 世界的には多くの国が再エネ中心社会を目指していますが、日本は大きく遅れています。最近の世界の再エネ発電設備の年間導入量は、毎年史上最高を記録する勢いですが、日本では固定価格買取制度導入直後は急増したものの、自公政権下の2015年以降は減り続けています。現在の再エネ比率は経済協力開発機構(OECD)加盟国中で最低水準です。

 日本では、2030年の再エネの普及目標は、多くの国がすでに達成している低い水準で、再エネの優先利用政策も採られていません。再エネよりも原発がベースロード電源として優先供給され、電力需要が少ない時に太陽光発電などが出力抑制されているのです。ドイツなどでは再エネ電力を優先供給し、石炭や天然ガス火力を抑制して、燃料費を節約し、二酸化炭素も削減しています。

 再エネ発電設備を新設する際、送電線の設置費に加えて幹線強化費まで要求される場合もあり、これが再エネの導入を阻害し、コスト高を生んでいます。

 また、再エネ普及は乱開発を伴い、地域が反対する企業主導ではなく、市民や地域主導で地域発展につながる方式で進めるべきです。

(「しんぶん赤旗」2022年7月7日より転載)