「将来にわたって原子力を持続的に活用していく」と経済産業相が先日、福井県知事との会談で強調したといいます。閣議決定している「エネルギー基本計画」に定める原発政策は「可能な限り原発依存度を低減する」です。経産相の発言はこれとかけ離れていないか▼温室効果ガス削減目標を渡りに船とばかりです。今、基本計画の見直しに向けた経産省資料には「原子力を最大限活用していく」「40年を超える運転を進めていく」などの文言が並びます▼「米国が80年の長期運転をめざしている。(日本が)その半分に限られてしまうのでは事業の効率性の点で合理的ではない」。法律で定められた原発運転原則40年ルールのさらなる延長を求める原発推進派の委員などの主張は露骨です▼原発は運転期間が長いほど壊れやすく、事故が起きた時の危険性が高いのに、他国の例を地震・火山大国のわが国に単純に当てはめていいのか。安全より経済優先の議論に逆戻りです▼同省が原発の特性として「災害時のレジリエンス(復元力)向上への貢献」を挙げているのも驚きます。これをおうむ返しに賛美する委員も。東日本大震災時には東京電力柏崎刈羽原発が、阪神・淡路大震災時には関西電力の原発が運転していた。日本海側にも原発が分散・立地しているので災害に強いと▼地震と津波で福島第1原発の3基が炉心溶融し広範な地域に放射性物質をまき散らし、いまだに解決できないままです。原発推進の議論は現実から目をそらしています。
(「しんぶん赤旗」2021年4月30日より転載)