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市民が放射能測定 のべ4000人 17都県3400カ所・・原発事故 汚染を可視化

もやい展の「みんなのデータサイト」のコーナーに展示された「17都県放射能測定マップ」

マップ集 2万部突破

 福島第1原発事故で東日本の広い地域に降り注いだ放射能を測定し、測定結果をマップ集として発行した市民団体があります。放射能のことを深く知り、原発事故を終わったことにさせないために、ぜひ活用をとよびかけています。(徳永慎二)

 この市民団体は約30の市民放射能測定室が参加する「みんなのデータサイト」。マップ集の『図説17都県放射能測定マップ+読み解き集』は、のべ約4000人が3400地点の土壌の放射性セシウム量を測定した結果をまとめたものです。

 2018年11月に自費出版。19年に優れたジャーナリズム活動に贈られるJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞しました。寄せられた質問や新情報を加えて20年4月に増補版を発刊。合わせて2万部を突破しました。

 編集に携わった同サイト事務局の中村奈保子さんは「市民の力でつくった、市民のための本です。放射能の基本的な知識なども、わかりやすく編集し、解説しています。ぜひ手に取ってみていただきたい」といいます。発行目的について「福島原発事故は終わっていません。放射能のこと、食の安全、健康にも関心を持ってほしい。事故で何が起きたのか、今どうなっているのかを未来に残すのも目的です」。

もやい展周辺の放射線量を測定する人たち=1日、東京都江戸川区

遊ぶ子心配

 原発事故で断たれた人のつながりを取り戻そうと、東京都内で開かれた「もやい展2021TOKYO」(1~8日)。「みんなのデータサイト」も参加。同サイト企画の体験会で、同展参加者が会場周辺の放射線量を測定しました。「ピッ、ピッ、ピッ」と線量を知らせる音。「おおっ、ここは高い」と参加者は興奮気味でした。

 測定は1時間ほど。参加した千葉県市川市の青柳ひとみさん(41)は「3歳と7歳の子どもがいます。公園で遊ぶのが心配になります。高いところは除染してほしい」と話します。別の女性は「10年たって除染が進んでいると思っていたが、原発事故は続いていると実感した」といいます。

 測定数値について解説したのは同サイトの丹野心平さん。測定にかかわって8年。首都圏、福島、宮城、岩手各県で測定してきました。「東京都内でもマイクロホットスポット(放射能濃縮地点)はまだあります。指定廃棄物扱いとなる8000ベクレル/キロ相当の汚染もありますが、地上1メートルの空間線量を測定してもそれらは見つからないケースがほとんどです」

行政を監視

 同サイトが「プロジェクト」を立ち上げ、実施した土壌測定は、14年10月から17年9月までの3年間です。国が発表する空間線量をもとにした土壌汚染の推計値ではなく、実際に土を採取して地表から深さ5センチまでのセシウム137(半減期30年)とセシウム134(同2年)の含有量を測定。セシウム134は半減期が短いため、測定を急ぐ必要がありました。

 土の採取場所や採取方法など厳格な統一基準を設定し、測定の精度向上にもとりくみました。

 測定結果をもとに事故直後の放射性セシウム量を計算し「17都県放射能測定マップ」を作成しました。中村さんは「放射能は見えませんが、私たちの調査により、東日本に広く放射能が広がった実態がはっきりわかりました。これからも行政を監視する目的を持ち、自分たちで汚染を確かめるために食品や全国の土壌測定を続けていきたい」と話しています。

直後や未来の状況 推測できる

 避難者・被災者への聞き取りやアンケート調査を進めてきた宇都宮大学国際学部・清水奈名子准教授の話 政府は事故後、土壌中の放射性物質の詳細なデータを市民に提供してきませんでした。そこで多くの市民が協力して直接土壌の汚染状況を測定し、マップとして汚染状況を明らかにしたのは、大変貴重です。データから、事故直後や未来の汚染状況も推測できます。原発事故をよく知らない世代が出てきています。データとともに、被災者がどれだけ苦しんだか、どんな被害を受けたのか記録に残すことは、次世代を担う子どもたちにたいする私たちの責任でもあります。

(「しんぶん赤旗」2021年4月26日より転載)