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主張 柏崎刈羽と東電 原発扱う資格がないのは明白

 東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)で、他人のIDカードを使った中央制御室への不正入室や、侵入検知設備の長期故障など、原発の安全と核セキュリティーを損なう深刻な事件が相次ぎ、大問題になっています。原子力規制委員会は東電に、核燃料の移動禁止などの是正措置命令を出す方針です。

 命令が解除されるまで同原発は動かせません。同7号機は、原子力規制委の審査が全て終了し、年内の再稼働が狙われていましたが、そのもくろみは挫折しました。

許可を取り消すべきだ

 衆院経済産業委員会と原子力問題特別委員会の連合審査(18日)で日本共産党の藤野保史議員が、新規制基準による柏崎刈羽原発の設置変更許可を取り消すことを求め、原子力規制委の更田(ふけた)豊志委員長は「そのような議論が出てくることも否定しない」と答えました。東電に原発を扱う資格も能力もないことが改めて露呈されたことを踏まえ、きっぱりと許可を取り消すべきです。

 IDカード不正事件は2020年9月20日に起こりました。しかし、事件は隠されたまま3日後に規制委は保安規定を認可しました。侵入検知設備の機能喪失は、少なくとも18年から繰り返し生じていました。直近の1年だけで16カ所の侵入検知設備が故障し、うち10カ所は代替措置が不十分で、1カ月以上不正侵入を検知できない状態が続いていました。

 規制委は「組織的な管理機能が低下しており、防護措置の有効性を長期にわたり適切に把握しておらず、核物質防護上、重大な事態になりうる状況にあった」として、重要度も深刻度も、4段階評価で最悪レベルとしました。今後の対応区分も、「運転が許容されない状態」の一つ前の「第4区分」となりました。今後、のべ2000時間の追加検査を行います。1年以上かかるとみられています。

 そもそも東電は、福島第1原発事故を起こした当事者です。地震による停電や津波による被災の危険性が、国会や住民から警告されていたのに、真摯(しんし)に耳を傾けることなく対策を怠り、甚大な被害を引き起こしました。その東電に、原発を動かす資格があるのかという問題は、当初から問われていました。しかし、規制委は、福島第1原発の廃炉と柏崎刈羽原発の安全性への東電の決意表明だけで済ませてしまいました。

 更田委員長は、「悪い意味で東電スペシャルなのではないか」(16日の会見)と東電を批判しましたが、東電に原発運転の資格ありと認めた規制委の姿勢も問われなければなりません。

 東電の「総合特別事業計画」(17年)には、「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を実現」と明記されています。この計画は、首相と経産相が認可したものです。柏崎刈羽原発の再稼働に向けて経産省幹部が昨年80回も現地入りしました。東電と一体となって、柏崎刈羽原発の再稼働を進めてきた政府の責任も免れません。

再稼働方針を撤回せよ

 菅義偉首相は19日の参院予算委員会で、日本共産党の山下芳生議員に「東電の組織の体質や原発を扱う資格にまで疑念を持たれてもやむを得ない」と答弁しました。この言葉に偽りがないなら、柏崎刈羽原発の再稼働という政府方針を撤回するしかありません。

(「しんぶん赤旗」2021年3月30日より転載)