東京電力福島第1原発事故後、4基の原発を再稼働させ7基が新規制基準に“合格”した関西電力ですが、昨年11月に大飯原発(福井県おおい町)4号機を停止して稼働原発が2カ月半にわたりゼロとなる事態になりました。その原因の一つが高浜原発の機器のトラブル。専門家から徹底調査を求める声が上がっています。
(松沼環)
昨年11月下旬、定期点検中の高浜原発(福井県高浜町)4号機で3台の蒸気発生器のうち2台から計4本の細管に外側(2次系)からの傷が見つかりました。関電は同12月になって、細管に傷をつけたのは運転に伴い細管の表面に生成される鉄酸化物(スケール)である可能性が高いとする調査結果を発表しました。
検査のたびに傷
蒸気発生器は、放射性物質を含む1次系と放射性物質を含まない2次系の冷却水を隔てる安全上重要な機器。
高浜原発では、2018年の3号機の定期検査で1本の細管に外側からの傷が見つかって以降、19年10月に4号機で全3台の蒸気発生器から計5本、昨年2月に3号機で2台の蒸気発生器から計2本と定期検査のたびに同様の傷が見つかっていました。関電は、これらの原因について外部から混入した異物が傷をつけたと結論付け、再発防止策としては、異物の混入防止の徹底を掲げました。
しかし、これらの傷に対する関電の調査では、細管に傷があった蒸気発生器から見つかったスケール以外の異物は合計2個の金属片だけ。さらに傷を「発生させた可能性がある」と関電が評価できたのは1個だけです。関電は、傷をつけた異物は排水時に流出したと説明してきました。
一方、細管からはく離したスケールは、毎回の調査で蒸気発生器から複数見つかっていましたが、その接触によって「伝熱管(細管)が摩耗減肉する可能性は低い」と、関電は主張していました。
住民や専門家からは、十分な原因究明ができていないと徹底調査を求める声が上がっていましたが、原子力規制委員会は、関電の主張を受け入れ、運転の再開を容認してきたのです。
今回、関電は4号機の前回の定期検査では異物の混入対策を徹底したはずですが、再び傷が発生しました。調査でもスケール以外の異物は見つかりませんでした。関電は初めて、スケールが傷をつけた可能性が高いと発表しました。
「対処は難しい」
昨年12月の関電の発表後、規制委の更田豊志委員長は、細管の傷の原因と対策について「異物であった場合は異物管理の問題。スラッジ(はく離したスケール)が原因ということになると、これは水質管理の問題になって対処が難しくなると思います」と会見で話しています。
旧原子力安全委員会事務局の元技術参与・滝谷紘一氏は「細管を抜管して金属組織検査も含めて、さらなる詳細検討が必要です。高浜3、4号機の蒸気発生器は、国内で最も長期間使用されています。今回のトラブルは、これまで顕在化していなかった老朽化によるものではないでしょうか」と指摘します。
その上で「伝熱管のスケール生成は避けがたい。再発防止のため、すべての加圧水型原発に対してスケール生成状況の調査が必要です」と話しています。