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「核のごみ」処分地 10万年隔離可能か(上)・・「好ましくない地域」

 原発の運転で出る「核のごみ」の最終処分地選定のための第1段階である「文献調査」が、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で始められています。核のごみは人間の生活環境から10万年程度の隔離が必要といわれます。日本で安全な処分は可能なのでしょうか。(松沼環)

 日本では、使用済み核燃料からプルトニウムやウランを回収し、残った廃液にガラスを混ぜた「ガラス固化体」を高レベル放射性廃棄物(=核のごみ)としています。ガラス固化体は、製造直後の表面線量は20秒で人が死に至るような高い放射能を持っており、人間の生活環境から10万年程度の隔離が必要です。このため政府は30~50年地上で冷却した後、地下300メートルより深い地層に埋める「地層処分」の方針です。

調査は20年

 処分地の選定のための調査は、経済産業省の認可団体「原子力発電環境整備機構」(NUMO=ニューモ)が実施。3段階で行われます。最初が寿都町、神恵内村で始まった文献調査で約2年、次の「概要調査」が約4年、最終段階の「精密調査」が約14年と、全体で20年程度とされています。

 文献調査は、地質図や学術論文などの文献・データを基に行う机上調査で、ボーリングなどの現地調査は行いません。一方、継続的な対話を進めるためとしてNUMOは、対象地域に広報などの機能を果たす拠点を設置。また、2町村は、今後2年間で国から最大20億円の交付金を受け取れます。

 政府は2017年、最終処分場の選定に向け調査対象となる可能性がある地域を示した全国地図「科学的特性マップ」を発表しました。

 マップは近くに火山や活断層がないなどの要件や基準をまとめ全国を色分けしています。処分場として「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」を緑色に、加えて海から20キロ以内は「輸送面でも好ましい地域」として濃い緑色に塗りました。これらを合わせると全国の約3分の2の面積になります。

火山や断層

 この「マップ」では、神恵内村のほとんどの地域がオレンジ色で示される「好ましくない特性があると推定される地域」。火山の中心から15キロ以内にあるためで、緑色は村内の南にわずかに見いだされるだけです。

 NUMOは地層処分の地下施設について、坑道の総延長は200~300キロ程度、6~10平方キロの規模としています。村内の緑色で示された地域には収まらない規模です。

 一方、寿都町をこの「マップ」でみると、中心付近にオレンジ色の線があります。活断層の黒松内(くろまつない)低地断層帯が存在するためです。「マップ」では、長さ10キロ以上の活断層の両側に断層長さの1%の幅の範囲がオレンジ色の地域ですが、そのすぐ外は緑色の地域となっています。

 地震本部の評価によれば、黒松内低地断層帯は長さ32キロ以上で、1000年に0・5~0・7メートルの上下方向のずれがあるとされています。10万年間なら50~70メートルとなります。果たしてこれが適地なのでしょうか。(つづく)

(「しんぶん赤旗」2021年1月11日より転載)