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福島に生きる 元東電関連社員 加澤恩之さん(63) 雨風に負けず金曜行動

 「原発をゼロに」と福島県いわき市のJRいわき駅前で毎週欠かさず、「金曜行動」に取り組んでいる人がいます。

 加澤恩之(かざわ・ひろゆき)さん(63)です。

■責任認めるまで

 2013年6月から参加し、約7年間で400回を超える宣伝活動を行ってきました。当初は20人を超える人たちが集まりましたが「最近は4~5人の時もあります」と、残念がります。

 「金をもらっているのだろう」などと心ない言葉を投げかける人もいますが、加澤さんは「国と東京電力が責任を認めるまでは続けます」と、嫌がらせにも屈することなく活動を続けています。

 いっしょに金曜行動にとりくむ新婦人いわき支部の阿部節子さんは「真面目一本の人です。金曜行動の準備一切を仕切っています。ハンドマイク、横断幕などを用意し、雨が降っても、風が吹いても休むことなく活動しています」と、頼りにしています。

 調理師の資格を持つ加澤さんは、東京電力福島第2原発の食堂で従業員の食事を作ってきました。東京電力女子サッカー部マリーゼの食事も作りました。「3・11」の日は食材の調達のために市場に向かっていました。

 幹線道路は大混雑。職場まで到着することはできませんでした。東電関連会社の社員でしたが、その年の4月になって「健康保険証を返して」と言われて、解雇通告されました。「原発事故を起こしたのに東電はなんの反省もない」「データのねつ造などうそつきの会社だ」といわき市民訴訟(伊東達也・原告団長、原告数1574人)の原告に加わりました。

■自然エネ転換へ

 市民訴訟は、いわき市民らが国と東京電力に計約27億円の損害賠償を求めた裁判です。福島第1原発事故で放射性物質への不安を抱えながらの生活を強いられたなどとして、福島地裁いわき支部(名島亨卓裁判長)に提訴。今年、10月21日に結審。判決は2021年3月26日に出ます。

 判決で目指すのは(1)将来にわたる健康を守る施策を確立すること(2)安全・安心を取り戻すことを大前提にした復興(3)避難者への支援継続(4)原発をなくし再生可能な自然エネルギーへの政策転換―などです。

 加澤さんが金曜行動に取り組んでいる間、政府は、秘密保護法(特定秘密の保護に関する法律)を成立させました。漏えいすると国の安全保障に著しい支障を与えるとされる情報を「特定秘密」に指定し、それを取り扱う人を調査・管理し、外部に知らせたり外部から知ろうとしたりする人などを処罰するものです。

 「原発の安全性に関わる情報が『特定秘密』扱いにされて取り締まりの対象にされかねない」と危機感を持っています。

 金曜行動に取り組む日々。原発事故は終わっていません。「トリチウムの汚染水を海へ放出するのはもってのほかです」

 自民党支持だった加澤さんは、原発事故問題を通して見えてきた社会の仕組みに目覚めました。

 「今は共産党を応援しています。原発ゼロの社会をつくるには脱原発の声を大きく広げることが求められているからです」とキッパリと宣言します。

 (菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2020年11月27日より転載)