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福島に生きる 古民家再生に従事 豊田善幸さん(51) 豊かな漁村風景残したい

 福島県いわき市中之作の建築士、豊田善幸さん(51)は、NPO法人「中之作プロジェクト」代表です。古民家の再生と空き家の改修を続けています。

■空き家や更地…

 東京電力福島第1原発事故から9年8カ月。「社会に能動的に関わってきた10年です。やらなければならない仕事に挑戦してきました」と豊田さんはふり返ります。

 「中之作プロジェクト」は、東日本大震災で津波被害にあい、多くの建物が解体の危機に瀕(ひん)していたときに、「このままでは中之作の豊かな漁村風景が損なわれてしまう」と、住民主導で始まりました。

 中之作はかつて、漁業と常磐炭鉱の石炭積み出し港として栄えてきました。炭鉱は斜陽となり、漁業は東日本大震災と原発事故で壊滅的打撃を受けました。人口減少で空き家や更地が目立つようになりました。

 東日本大震災後に豊田さんと妻の千晴さんは、海が見える丘の上に建つ平屋の空き家を改修しました。空き家は江戸時代(19世紀初めごろ)の建物です。

 古民家再生のため、小さな漁師町にのべ800人が訪れました。素人集団が手仕事で改修工事をすすめたのです。2014年に修復は完了しました。

 「清航館(せいこうかん)」と名付けて生まれ変わりました。

 「200年持つ家は偶然ではない。残るべくして残った技術があり、建築学の教科書です」と豊田さん。

 「ひとの力」を最大限活用しての古民家再生。「多くの人たちが再生に携わり関係者になってもらうこと。それが建物を永く残す要素になる」。豊田さんの考え方です。

 「清航館」は、レンタルの貸家や会議室、一日レストラン、個展、ヨガなどの各種教室にも使用できます。

 千晴さんも建築士です。地域の空き家を改修したカフェを19年にオープンさせました。「海に浮かんだ月を見ながら語り会う」との願いを込めて「月見亭」としました。

 周辺の段々畑を復活させて、野菜を育てて味わいます。

 「月見亭」の眼下には太平洋が一望できて、折戸漁港を見下ろせます。素晴らしい眺望と、波の音を聞きながらのおいしい「カフェめし」。多くの人を魅了します。

■まず無駄なくし

 豊田さんはいわき市に生まれ、大学で建築工学を学び、福島県内の建築設計事務所で働いた後に独立しました。「断熱・気密オタク」として知られています。

 「今後、電気への依存度を減らしても快適性が損なわれない家づくりが重要だ」と、考えた豊田さん。「エネルギー消費量の少ない建物をつくることと、無駄にエネルギーを消費しない暮らしがこれからの常識です。どのエネルギーを使うかなんてその次の話です。オール電化だから『いい家』なんてそんな単純な話ではない」といいます。

 トリチウムを含んだ汚染水の海への放出や原発再稼働の加速に危機感を持つ豊田さん。

 「汚染水を海に流して何が安全なのか? 原発再稼働には強く反対します」

(「しんぶん赤旗」2020年11月11日より転載)