関西電力大飯原発4号機(福井県)が11月3日、定期検査のために停止し、関電の運転中の原発は当面ゼロとなりました。全国的にも現在、運転中の原発は1基のみ。政府が「重要なベースロード電源」などと位置付けて推進している原発ですが、トラブルや裁判、新規制基準対応などによる停止で、電源としての不安定さが際立っています。(松沼環)
関電は、東京電力福島第1原発事故後これまでに4基の原発(いずれも福井県)を再稼働させました。しかし、大飯原発3号機は、亀裂の見つかった配管交換のため9月に終了する予定だった定期検査を延長。運転再開時期は未定です。高浜原発3、4号機はテロ対策設備完成の遅れのため停止中です。同原発3号機は、1月からの定期検査で蒸気発生器細管に傷が見つかったため検査が想定以上に長期化し、運転再開できないままテロ対策施設の設置期限を迎えています。
全国は1基のみ
全国的には9基の原発が再稼働しましたが、運転中は現在、九州電力玄海原発4号機(佐賀県)だけです。四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)は今年1月の広島高裁の運転差し止め仮処分決定のため停止中。九電川内原発1、2号機(鹿児島県)は、テロ対策設備の完成遅れのため停止中です。玄海原発3号機は定期検査中です。
地元同意の課題
原子力規制委員会の審査に合格した原発はほかに7基ありますが、再稼働していない原発は、地元同意などの課題を抱えています。また、審査中の11基の原発は、敷地内の断層などが議論されている状況です。
菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で「原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します」としています。政府は原発をベースロード電源とする姿勢を変えていませんが、今後も原発による電力供給は、不安定な状況が予想されます。再生可能エネルギーを増やしていくためにも原発に頼らない電力供給を考える必要があります。
原子力から撤退早く
大島堅一・龍谷大学教授の話 今回のような事態は今後もあるでしょう。事故やトラブルは原子力につきものですし、伊方原発のように社会的情勢によっても止まりえます。電力会社にとって原子力に頼ることは、経営上のリスクです。国も真剣にCO2排出対策をするのなら原子力があってはだめです。一つは、原子力は計画通りにいかないからです。そして、再エネを増やすためには出力制御ができない原子力はとても邪魔になるからです。原子力からは、早く撤退すべきです。
(「しんぶん赤旗」2020年11月4日より転載)