東京電力福島第1原発事故の汚染水問題をめぐって、東電の現行タンク計画によると約2年後に満杯になると推定されていますが、解体するタンク跡地にタンクを増設すれば、さらに2年近い規模の余裕が確保できることが分かりました。政府・東電は現時点で、この敷地にタンクを増設する予定はないとしていますが、「真剣に議論すべきだ」という声があがっています。
タンク増設「真剣に検討を」の声
タンクには現在、高濃度汚染水を処理した後に残るトリチウム(3重水素)汚染水が約123万トンたまっており、現行タンク計画(約137万トン)では2022年秋ごろに満杯になると東電は説明しています。政府は、薄めて海に流すなどの処分方法を検討中ですが、方針決定から処分開始まで約2年かかるとされ、政府は時間的制約を理由に早期決定に向けて前のめりの姿勢を示しています。
東電によると、漏えいしやすい「フランジ型」のタンク97基を解体した後、このスペースを利用すれば同じ容量(汚染水9万7000トン分)のタンク増設が可能です。汚染水の増加のペースを1日150トンと仮定すると、1年9カ月程度の余裕が生まれる計算です。
ただ東電は、核燃料デブリの関連施設や使用済み核燃料の一時保管施設なども廃炉を進めるために必要で「総合的に勘案していく必要がある」として、解体タンクの跡地利用は現時点で未定と説明。一方、経産省は「廃炉作業に影響を与えずに増設する余地はきわめて限定的だという状況は変わっていない。そのスペースにタンクをつくることにはならない」としています。
敷地利用計画の検証必要
国際環境団体「FoEジャパン」事務局長の満田夏花(みつた・かんな)さんの話 政府と東京電力はこれまで、タンクの容量があと2年だと言っていますが、それが適切かどうかを第三者が検証したものではありません。以前から政府の小委員会でも、タンクの置き場を増やせないのかという議論は出ていました。政府と東電は「タンクの敷地が足りない」と言って「決断を急ぐしかない」と印象操作をしているのではないかと考えています。
タンク容量や敷地の利用計画は、もっと検証すべきです。東電が考えている敷地利用計画は、燃料デブリの取り出しを前提にしています。デブリを取り出した後の保管施設などが書かれていますが、そもそもデブリを取り出すのは困難で、できたとしても危険です。最初に描いたレールを前提に議論して、それを地元に押しつけています。現実に廃炉をどうするのかを含めて、汚染水問題を議論すべきだと思っています。
決定遅らせ議論すべきだ
福島県の青年組織「DAPPE(ダッペ=平和と平等を守る民主主義アクション)」中心メンバーの久保田亮(りょう)さん(32)の話 政府は、2年後にタンクが満杯になるという前提で早期に結論を出そうとしています。これまで、福島県内7割の自治体が海洋放出を懸念し、漁業関係者からも反対の声が明確にでているのですから、海洋放出以外のやり方を再検討するのが筋だと思います。決定のタイミングを遅らせ、真剣に議論するべきです。
これまでサウンドデモやオンライン集会などを続けてきたなかで、「海洋放出はしてほしくない」という声が広がっているのを感じています。しかし政府の「結論ありき」の姿勢は変わっておらず、独裁的で民意を無視しています。
早期決定をさせないためにも、引き続き、集会や政府交渉で真剣な議論を求めていきたい。
(「しんぶん赤旗」2020年10月28日より転載)