きょうの潮流

 東京電力福島第1原発事故から9年半以上たっても、なお多くの住民が避難生活を余儀なくされています。原発敷地内では、事故で炉心溶融した三つの原子炉から放射能汚染水が1日百数十トンも発生しています▼この事故の当事者である東電に対し、原子力規制委員会が新潟県にある柏崎刈羽原発6、7号機を再稼働させる「適格性」を認めるお墨付きを与えました。原発の保守管理ルールなどを定めた保安規定に、社長がトップとして安全の責任を担うなどと明記されたからというのです▼他に書かれた内容をみると、福島第1原発の廃炉や賠償をやり遂げる、原発の運営は安全性の確保を前提とするなどといった、当然のことばかり。保安規定に違反すれば運転停止などの罰則があるものの、どんなことが違反にあたるか、あいまいです▼東電については事故後も適格性を欠く出来事が相次ぎ、柏崎刈羽原発の審査では、事故時の対応拠点の耐震不足を知りながら報告しなかったことまで発覚しています。それでも規制委は「適格性について否定する状況にはない」と条件付きで容認しました▼その規制委の判断を尊重し、原発の再稼働を進めるというのが原発に固執する政府方針です。政府と一体でつくった東電の事業計画も、廃炉や賠償の対応として原発再稼働で稼ぐことが前提になっています▼事故の収束、廃炉、賠償などの見通しも立っていないのに、その当事者に原発再稼働が許されていいのか。政府、規制委の判断が厳しく問われます。

(「しんぶん赤旗」2020年9月27日より転載)